腎被膜下血腫を発症した高齢者骨髄異形成症候群の1例

非外傷性に腎被膜下血腫を発症した,高齢者骨髄異形成症候群(以下,MDS)の1例を報告する.症例は82歳の女性,3年前から当科にてMDS·不応性貧血と診断し,主にプレドニンの投与と輸血でフォローしていた.外傷など特に誘因なく,発熱と腹痛を訴えられ,腹部CT所見から腎被膜下血腫と診断し,血小板輸血など保存的治療を行った.発症1カ月後から血腫部分は増大し,発症2カ月後に抗生剤無効のspike feverを認めたため,保存的治療では限界と考え,泌尿器科に転院とした.転院後,腎摘出術を行わず,血腫を穿刺し,膿瘍がドレナージされ,Klebsiella Pneumoniaeを検出した.ドレナージ後に抗生剤の...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 45; no. 2; pp. 231 - 235
Main Authors 斉藤, 誠, 田中, 雅則, 森岡, 正信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 2008
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.45.231

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Summary:非外傷性に腎被膜下血腫を発症した,高齢者骨髄異形成症候群(以下,MDS)の1例を報告する.症例は82歳の女性,3年前から当科にてMDS·不応性貧血と診断し,主にプレドニンの投与と輸血でフォローしていた.外傷など特に誘因なく,発熱と腹痛を訴えられ,腹部CT所見から腎被膜下血腫と診断し,血小板輸血など保存的治療を行った.発症1カ月後から血腫部分は増大し,発症2カ月後に抗生剤無効のspike feverを認めたため,保存的治療では限界と考え,泌尿器科に転院とした.転院後,腎摘出術を行わず,血腫を穿刺し,膿瘍がドレナージされ,Klebsiella Pneumoniaeを検出した.ドレナージ後に抗生剤の内服治療も併用し,血腫部分は縮小,炎症徴候も改善し,その後は1年以上,病態の再燃を認めていない.自験例はMDSによる血小板数の低下を認めた以外に,高齢者で軽度の糖尿病を合併していたために,何らかの細小血管の脆弱性も腎被膜下血腫を発症した一因になっていると推測された.また膿瘍を併発したのは高齢,糖尿病,MDSによる白血球の機能異常,プレドニン治療中など易感染状態であったためと考えられた.今後はMDSに限らず,高齢者の血小板減少症例に側腹痛,腰背痛が現れた際は,腎被膜下血腫を発症した可能性にも注意する必要がある.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.45.231