切除15年後に多発性再発を来たした腎細胞癌の1症例

症例は72歳,男性.1990年に左腎細胞癌の診断にて左腎摘出術を施行された.その際遠隔転移は見られず,以後経過観察されていた.2005年6月下旬,右腋窩に腫瘤を自覚し,7月4日精査のため当科に入院した.入院時右腋窩に小鶏卵大,弾性硬の腫瘤を触知し,エコーでは26×24mm,辺縁平滑で血管に富む腫瘤であった.血液検査上,腫瘍マーカーに大きな異常を認めなかった.胸部造影CTで同腫瘤は強い造影効果を認めた.腹部造影CTでは右腹直筋内および,膵鉤部にも造影される腫瘤を認めた.8月2日右腋窩腫瘤の切除生検を行った.組織所見が1990年に切除した左腎細胞癌と同様であったため,腎細胞癌の遠隔転移巣と診断した...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 44; no. 6; pp. 747 - 751
Main Authors 三木, 哲郎, 永井, 勅久, 永井, 彩子, 小原, 克彦, 越智, 雅之, 伊賀瀬, 道也, 高田, 清式
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 2007
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.44.747

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Summary:症例は72歳,男性.1990年に左腎細胞癌の診断にて左腎摘出術を施行された.その際遠隔転移は見られず,以後経過観察されていた.2005年6月下旬,右腋窩に腫瘤を自覚し,7月4日精査のため当科に入院した.入院時右腋窩に小鶏卵大,弾性硬の腫瘤を触知し,エコーでは26×24mm,辺縁平滑で血管に富む腫瘤であった.血液検査上,腫瘍マーカーに大きな異常を認めなかった.胸部造影CTで同腫瘤は強い造影効果を認めた.腹部造影CTでは右腹直筋内および,膵鉤部にも造影される腫瘤を認めた.8月2日右腋窩腫瘤の切除生検を行った.組織所見が1990年に切除した左腎細胞癌と同様であったため,腎細胞癌の遠隔転移巣と診断した.全身状態良好であったため手術切除の適応と判断し,当院外科で膵および腹直筋の腫瘍核出術を施行した.切除病理標本はいずれも腎細胞癌由来の組織所見であった.その後の経過は良好であり,現在まで外来にて経過観察中である.本症例の経過は,根治術と考えられる腎細胞癌術後も長期にわたり全身の再発巣の有無を検索する必要性を示すものと考えられる.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.44.747