外側翼突筋内に膿瘍を形成した化膿性顎関節炎の1例

化膿性顎関節炎は比較的まれな疾患である。今回,右側顎関節部に生じた外側翼突筋内に膿瘍を伴った化膿性顎関節炎の1例を経験したので,その概要を報告する。症例は58歳の男性。右側顎関節部の腫脹,開口痛を主訴に当科へ来院した。切歯部最大開口距離は18 mmで,咬合時に右側犬歯部は約2 mmの開咬を呈した。CTおよびMRI所見で右下顎頭内側極の骨吸収と右側顎関節包内および外側翼突筋内に膿瘍形成を認めた。試験的穿刺により,黄白色の粘稠な膿汁を吸引した。細菌検査により,口腔内常在菌であるPeptostreptococcus microsが同定された。抗菌薬の内服投与および静脈内点滴投与で徐々に症状は消退した...

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Published in日本顎関節学会雑誌 Vol. 23; no. 3; pp. 155 - 160
Main Authors 高田, 佳之, 小林, 正治, 西山, 秀昌, 小野, 由起子, 泉, 直也, 齊藤, 力
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 2011
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Summary:化膿性顎関節炎は比較的まれな疾患である。今回,右側顎関節部に生じた外側翼突筋内に膿瘍を伴った化膿性顎関節炎の1例を経験したので,その概要を報告する。症例は58歳の男性。右側顎関節部の腫脹,開口痛を主訴に当科へ来院した。切歯部最大開口距離は18 mmで,咬合時に右側犬歯部は約2 mmの開咬を呈した。CTおよびMRI所見で右下顎頭内側極の骨吸収と右側顎関節包内および外側翼突筋内に膿瘍形成を認めた。試験的穿刺により,黄白色の粘稠な膿汁を吸引した。細菌検査により,口腔内常在菌であるPeptostreptococcus microsが同定された。抗菌薬の内服投与および静脈内点滴投与で徐々に症状は消退した。初診から3年経過した現在,右側顎関節部の腫脹は消失し, 開口時に下顎骨の右側偏位と関節雑音を認めるものの, 切歯部最大開口距離は47 mmに改善した。口腔内常在菌が起炎菌であったことから歯性感染が下顎頭へ波及し,さらに外側翼突筋内へ進行したことが示唆された。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu.23.155