口唇裂・口蓋裂乳児の口蓋形態の特徴と口唇形成術の影響についての経時的分析
本論文の目的は,口唇裂・口蓋裂患者の上顎の劣成長が,生下時よりもともと存在するものであるかを明らかにし,さらに口唇形成術の口蓋に与える影響の様式と,その期間について,種々の破裂型毎に比較検討するものである,.材料は,口蓋裂単独を除く代表的な破裂型である片側性唇(顎)裂(UCL)32名,片側性唇顎口蓋裂(UCLP)22名,および両側性唇顎口蓋裂(BCLP)7名の,生後2か月目から口唇形成術後18か月目に至る経時的な上顎歯槽弓模型を用いた.分析は口蓋基準点問距離の計測とともに,口蓋の組織量を把握するための口蓋表面積計測や,立体的に口蓋を把握する目的で口蓋窩横断面図からの計測もあわせて行った. その...
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Published in | 日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 8; no. 1; pp. 36 - 66 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本口蓋裂学会
1983
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ISSN | 0386-5185 2186-5701 |
DOI | 10.11224/cleftpalate1976.8.1_36 |
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Summary: | 本論文の目的は,口唇裂・口蓋裂患者の上顎の劣成長が,生下時よりもともと存在するものであるかを明らかにし,さらに口唇形成術の口蓋に与える影響の様式と,その期間について,種々の破裂型毎に比較検討するものである,.材料は,口蓋裂単独を除く代表的な破裂型である片側性唇(顎)裂(UCL)32名,片側性唇顎口蓋裂(UCLP)22名,および両側性唇顎口蓋裂(BCLP)7名の,生後2か月目から口唇形成術後18か月目に至る経時的な上顎歯槽弓模型を用いた.分析は口蓋基準点問距離の計測とともに,口蓋の組織量を把握するための口蓋表面積計測や,立体的に口蓋を把握する目的で口蓋窩横断面図からの計測もあわせて行った. その結果,術前,UCLPとBCLPはsegmentの開大のため幅径が大きいばかりでなく,口蓋窩傾斜角の増加等の立体的な2次的変形を示していた.さらに術前には,口唇圧の不足から生じる付加的な成長量が各破裂型に加わっていると考えられ,UCLは正常群に比べて全体的に口蓋は大きかった.一方,破裂の重症度に従って口蓋表面積が減少する傾向があり,口蓋の裂は口蓋表面積の不足をもたらすことが示唆された. 口唇形成術は基本的には開大したsegmentを接近させ正常に近い口蓋形態に改善する作用を有しているが,同時に術後9-12か月目まで続く成長力の低下を伴っていた.術後のsegmentの接近はBCLPがUCLPより著明であり,両者ともに上顎結節付近を中心としてsegmentが正中に回転することにより生じていた.しかし,この成長抑制期間を過ぎた,術後9-12か月目から18か月目までの,各破裂型の口蓋は正常人に劣らない成長力を示し,口唇形成術の口蓋の成長への影響は,一時的で軽度であることが示唆された. |
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ISSN: | 0386-5185 2186-5701 |
DOI: | 10.11224/cleftpalate1976.8.1_36 |