巨大両側副腎腫瘤で見出された鼻型NK/T細胞リンパ腫の1例
症例は76歳女性.体重減少と発熱を主訴に近医を受診し,腹部エコーにて両側副腎の腫大(左9×8 cm,右5×2 cm)を認め,精査目的に入院となった.不明熱の精査のために造影CTを施行したところ,両側副腎以外に鼻腔内にも腫瘍があり,Gaシンチで鼻腔と副腎の腫瘍に一致して異常集積を認めた.血液検査ではLDHとsIL-2Rが高値であった.鼻腔内腫瘍の生検を行い,鼻型NK/T細胞リンパ腫と診断した.生検腫瘍組織のEBV-encoded RNAは検出されなかった.入院時CTで肺動脈塞栓を偶然認めたために,ヘパリン,及びワルファリンで治療し,塞栓は消失した.悪性リンパ腫に対して,THP-COP療法を施行し...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 45; no. 6; pp. 660 - 665 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
2008
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.45.660 |
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Summary: | 症例は76歳女性.体重減少と発熱を主訴に近医を受診し,腹部エコーにて両側副腎の腫大(左9×8 cm,右5×2 cm)を認め,精査目的に入院となった.不明熱の精査のために造影CTを施行したところ,両側副腎以外に鼻腔内にも腫瘍があり,Gaシンチで鼻腔と副腎の腫瘍に一致して異常集積を認めた.血液検査ではLDHとsIL-2Rが高値であった.鼻腔内腫瘍の生検を行い,鼻型NK/T細胞リンパ腫と診断した.生検腫瘍組織のEBV-encoded RNAは検出されなかった.入院時CTで肺動脈塞栓を偶然認めたために,ヘパリン,及びワルファリンで治療し,塞栓は消失した.悪性リンパ腫に対して,THP-COP療法を施行し,鼻腔,副腎の腫瘍は共に一時的に縮小を認めたが,再燃した.治療経過中に腹痛が出現し,悪性リンパ腫に原因すると考えられる小腸穿孔と診断した.全身状態が不良のために,開腹せず経過観察し,第61病日に死亡された.内分泌学的検査では血液ACTH 158.0 pg/ml,コルチゾル14.6 μg/dlであり,潜在性副腎不全が考えられたが,コルチゾル分泌の日内変動は消失し,1 mgと8 mgのデキサメサゾン負荷試験で十分に抑制されず,preclinical Cushing症候群の診断基準も満たした.副腎の巨大腫瘤を伴う鼻型NK/T細胞リンパ腫は極めて稀であり,両側副腎腫大を呈する疾患の鑑別上重要であり,報告した. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.45.660 |