スプリント療法を含む集学的連携治療により,咬合改善が認められた顎関節リウマチの1症例

59歳女性。2011年5月,右側顎関節痛と咬合異常を主訴に来院。既往歴は2007年9月,56歳時に関節リウマチ(以下RAと略す)を発症し,内分泌・骨・リウマチ内科にて加療中。初診時口腔内所見は開口距離32 mmで,右側下顎大臼歯部のみ咬合接触が認められた。MR画像およびCT画像では右側非復位性関節円板前方転位で,下顎頭に骨変化を認めた。左側は復位性関節円板前方転位を認めた。2010年2月頃からRAによる顎関節を含めた関節症状が出現し,リウマトレックス(以下MTXと略す)6 mg/週を開始したが,副作用で白血球減少のためMTXを減量すると,顎関節を含めた関節炎が再燃した。免疫抑制剤タクロリムスを...

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Published in日本顎関節学会雑誌 Vol. 25; no. 3; pp. 171 - 176
Main Authors 森, 悠衣, 岩崎, 春美, 後藤, 仁志, 後藤, 基宏, 窪, 寛仁, 覚道, 健治, 秋山, 広徳, 四井, 資隆, 清水谷, 公成
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 2013
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Summary:59歳女性。2011年5月,右側顎関節痛と咬合異常を主訴に来院。既往歴は2007年9月,56歳時に関節リウマチ(以下RAと略す)を発症し,内分泌・骨・リウマチ内科にて加療中。初診時口腔内所見は開口距離32 mmで,右側下顎大臼歯部のみ咬合接触が認められた。MR画像およびCT画像では右側非復位性関節円板前方転位で,下顎頭に骨変化を認めた。左側は復位性関節円板前方転位を認めた。2010年2月頃からRAによる顎関節を含めた関節症状が出現し,リウマトレックス(以下MTXと略す)6 mg/週を開始したが,副作用で白血球減少のためMTXを減量すると,顎関節を含めた関節炎が再燃した。免疫抑制剤タクロリムスを少量併用したが十分な効果が得られなかった。副作用が落ち着いたので2011年6月にMTXを6 mg/週に戻すと症状は改善した。2011年5月に顎関節症状が再燃し,血液検査結果ではCRP:0.07 mg/dl, DAS28-ESR:4.18, RF:63 Iu/mlであった。スプリント装着後2週間経過時に咬合接触面積の増加が認められ,装着後1~2か月経過時には,関節痛より咬筋部痛があり,咬合状態は右側下顎第二大臼歯が強く咬合接触し,左側下顎第一・第二大臼歯の咬合接触が認められた。装着後3か月経過時にはさらに右側下顎第一大臼歯が咬合接触した。装着後4か月経過時には右側顎関節は軽度の違和感のみが残存し,咬合の初期接触位では離開するも深く咬むと左側下顎臼歯部の咬合接触が認められるようになった。5か月経過時には臼歯の咬合接触を認めた。装着後10か月経過時には右側顎関節痛も消失し,咬合状態も良好なため,スプリントを外して経過観察を行った.MR画像検査の結果,右側下顎頭上面に骨増生とくちばし状の骨変化を認めた。顎関節症状が消失した頃と同時期の2012年4月の血液検査結果ではCRP:0.09 mg/dl, DAS28-ESR:3.11, RF:38 Iu/mlと低下し,RAの活動性に中等度の改善および咬合状態の回復がみられた。本症例はスプリント療法を併用した包括治療により,顎関節リウマチと咬合状態の改善に効果的であった。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu.25.171