化膿性顎関節炎から波及したと思われる側頭下窩膿瘍の1例

62歳女性に発症した,化膿性顎関節炎から波及したと思われる側頭下窩膿瘍の1例について報告する。患者は当科初診より約1か月前から右顎関節部の開口時痛および開口障害を認めたため,某病院歯科口腔外科および耳鼻科受診したが診断を得られなかった。その後,側頭動脈炎を疑われ当院リウマチ内科および耳鼻科を紹介され受診したが原因がわからず,精査依頼にて当科受診となった。当科初診時,患者は右顎関節周囲を中心に右頬部にかけての自発痛および,腫脹,咬合不全を訴えていた。血液検査所見では白血球数8,000,CRP15.1と高値を認め,赤血球沈降速度の著しい亢進を認めた。パノラマX線写真にて明らかな原因歯はなかった。口...

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Published in日本顎関節学会雑誌 Vol. 22; no. 3; pp. 181 - 184
Main Authors 重松, 司朗, 杉崎, 正志, 右田, 雅士, 塩見, 周平, 大畠, 仁, 吉野, 正裕, 小林, 大輔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 2010
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ISSN0915-3004
1884-4308
DOI10.11246/gakukansetsu.22.181

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Summary:62歳女性に発症した,化膿性顎関節炎から波及したと思われる側頭下窩膿瘍の1例について報告する。患者は当科初診より約1か月前から右顎関節部の開口時痛および開口障害を認めたため,某病院歯科口腔外科および耳鼻科受診したが診断を得られなかった。その後,側頭動脈炎を疑われ当院リウマチ内科および耳鼻科を紹介され受診したが原因がわからず,精査依頼にて当科受診となった。当科初診時,患者は右顎関節周囲を中心に右頬部にかけての自発痛および,腫脹,咬合不全を訴えていた。血液検査所見では白血球数8,000,CRP15.1と高値を認め,赤血球沈降速度の著しい亢進を認めた。パノラマX線写真にて明らかな原因歯はなかった。口腔内には明らかな異常所見は認めなかった。MRI検査にて上関節腔に一致した高信号像を認め,また,患側の関節頭を中心に外側翼突筋,側頭筋,および咬筋に炎症を認めたため本疾患と診断された。同日,全身麻酔下に頬骨弓下より側頭下窩を開放したところで多量の排膿を認めたため,ドレーンを留置した。術後はドレーンからの洗浄および抗菌化学療法により急速に腫脹,疼痛が改善し,咬合異常も消失した。また,白血球数およびCRP値も著しく改善したため9日目で退院とした。現在も,再発の傾向はなく経過良好である。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu.22.181