Group B streptococcusによる皮下膿瘍,菌血症に続発した高齢者反応性多発関節炎の1例

今回我々は,高齢女性においてGroup B streptococcus菌血症,皮下膿瘍および反応性多発関節炎を生じた一例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は,基礎疾患として変形性膝関節症,心房細動のある77歳女性.両側変形性膝関節症に対して近医(整形外科)にてヒアルロン酸ナトリウムを関節内投与された.翌日より発熱し,両側膝痛増悪,左肩痛も出現,歩行困難となり当院来院し緊急入院となる.入院時,発熱,左肩および両膝の発赤,腫脹,疼痛及び著明な白血球数,血清CRP値の上昇を認めた.血液培養にてGroup B streptococcus陽性.CTでは,左肩および両膝の疼痛部位に液体貯留を認...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 44; no. 6; pp. 761 - 766
Main Authors 大田, 秀隆, 山口, 泰弘, 小島, 太郎, 大池, 裕美子, 江頭, 正人, 秋下, 雅弘, 大内, 尉義
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 2007
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Summary:今回我々は,高齢女性においてGroup B streptococcus菌血症,皮下膿瘍および反応性多発関節炎を生じた一例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は,基礎疾患として変形性膝関節症,心房細動のある77歳女性.両側変形性膝関節症に対して近医(整形外科)にてヒアルロン酸ナトリウムを関節内投与された.翌日より発熱し,両側膝痛増悪,左肩痛も出現,歩行困難となり当院来院し緊急入院となる.入院時,発熱,左肩および両膝の発赤,腫脹,疼痛及び著明な白血球数,血清CRP値の上昇を認めた.血液培養にてGroup B streptococcus陽性.CTでは,左肩および両膝の疼痛部位に液体貯留を認めた.Group B streptococcusによる化膿性関節炎を疑い,関節穿刺をおこなうも関節液はやや混濁しているものの細菌培養検査は陰性であった.抗菌薬静注による治療を開始したところ,緩余に炎症所見低下するも完全には陰性化せず,左膝の膿瘍は悪化したため外科的ドレナージを施行,術中の関節造影では膿瘍と関節腔との交通は認めなかった.したがって,皮下膿瘍がprimary focusとなりGroup B streptococcus菌血症,反応性関節炎に至ったものと判断した.手術後,抗菌薬大量静注を継続し,症状軽快,炎症反応も陰性化した. 反応性関節炎は感染生物と滑膜との免疫学的交差反応で生じるが,Group B streptococcusによる報告はほとんどない.Group B streptococcus感染症は,必ずしも妊娠とは関係なくとも感染症をおこす原因となり得て,糖尿病や脳血管障害など重篤な基礎疾患を持つ一般成人だけでなく,高齢者の感染症の原因としても重要であることが近年明らかとなってきており,注意が必要である.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.44.761