耳硬化症に対するアブミ骨手術後の骨導聴力の変化

耳硬化症は基本的には中耳疾患であるが,蝸牛機能を反映するはずの骨導聴力がしばしば低下する.これはアブミ骨の固着により耳小骨連鎖の共振が妨げられ,慣性骨導の効果が減弱するためであると考えられている.また,この骨導聴力は多くの場合アブミ骨手術後に改善することが知られている.今回われわれは,当科でアブミ骨手術(アブミ骨底開窓術またはアブミ骨底部分切除術)を受けた耳硬化症患者6例6耳を対象とし,術前術後に純音聴力検査を行い,7 周波数(125,250,500,1000,2000,4000,8000 Hz)の気導閾値と5周波数(250,500,1000,2000,4000 Hz)の骨導閾値について比較検...

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Published inJOURNAL OF UOEH Vol. 34; no. 3; pp. 231 - 235
Main Authors 橋田, 光一, 大久保, 淳一, 寳地, 信介, 大淵, 豊明, 鈴木, 秀明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 学校法人 産業医科大学 01.09.2012
産業医科大学
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ISSN0387-821X
2187-2864
DOI10.7888/juoeh.34.231

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Summary:耳硬化症は基本的には中耳疾患であるが,蝸牛機能を反映するはずの骨導聴力がしばしば低下する.これはアブミ骨の固着により耳小骨連鎖の共振が妨げられ,慣性骨導の効果が減弱するためであると考えられている.また,この骨導聴力は多くの場合アブミ骨手術後に改善することが知られている.今回われわれは,当科でアブミ骨手術(アブミ骨底開窓術またはアブミ骨底部分切除術)を受けた耳硬化症患者6例6耳を対象とし,術前術後に純音聴力検査を行い,7 周波数(125,250,500,1000,2000,4000,8000 Hz)の気導閾値と5周波数(250,500,1000,2000,4000 Hz)の骨導閾値について比較検討した.その結果,気導閾値は8000 Hzを除く6周波数において術後に聴力の改善がみられた.一方,骨導閾値は500 Hzと1000 Hzにおいて術後に聴力の改善がみられたが,2000 Hzにおける聴力レベルには変化がなかった.術後に骨導聴力の改善がみられた500 Hzおよび1000 Hzは慣性骨導における耳小骨連鎖の共振周波数に一致したが,2000 Hzにおける骨導聴力が改善しなかった理由は不明であり,今後のさらなる病態研究が必要である.
ISSN:0387-821X
2187-2864
DOI:10.7888/juoeh.34.231