小児の特発性血小板減少性紫斑病の臨床像と長期予後
【目的】特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は血小板の破壊亢進による後天性の出血性疾患であり、治療の基本方針として2004年に小児血液学会ITP委員会から診断・治療・管理ガイドラインが作成された。また成人の慢性ITPではH.pylori感染の関与と除菌療法の有用性が示されている。今回我々は、当院で経験した小児ITPの臨床像と長期予後およびH.pylori感染の関与について検討したので報告する。 【対象】1990年1月から2007年3月までに診断された15歳未満のITPで、血小板数5x104/μl未満を今回の検討の対象とした。H.pylori感染の有無は、2002年以降に発症もしくは慢性型として経...
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Published in | Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 56; p. 54 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本農村医学会
2007
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.56.0.54.0 |
Cover
Summary: | 【目的】特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は血小板の破壊亢進による後天性の出血性疾患であり、治療の基本方針として2004年に小児血液学会ITP委員会から診断・治療・管理ガイドラインが作成された。また成人の慢性ITPではH.pylori感染の関与と除菌療法の有用性が示されている。今回我々は、当院で経験した小児ITPの臨床像と長期予後およびH.pylori感染の関与について検討したので報告する。 【対象】1990年1月から2007年3月までに診断された15歳未満のITPで、血小板数5x104/μl未満を今回の検討の対象とした。H.pylori感染の有無は、2002年以降に発症もしくは慢性型として経過観察をしていた24例で検討を行った。 【結果】この間に診断されたITP患者は79例で、性別は男41例(51.9%)、女38例(48.1%)であった。平均年齢は3歳6ヶ月で、0~4歳55例(70.0%)、5~9歳19例(24.1%)、10~14歳9例(11.4%)、最も多い年齢は2歳の18例であった。初発時の血小板数の平均値は13911/μlで、1x104/μl未満が39例(49.4%)、1~1.9x104/μlが25例(31.6%)、2~2.9x104/μlが7例(8.9%)、3~5x104/μlが8例(10.1%)であった。病型は、急性型61例(77.2%)、慢性型15例(19.0%)、再帰型2例(2.5%)、(1例は観察期間が短く病型判定不能)であった。初回治療は大量グロブリン療法55例、ステロイド療法9例、無治療観察15例であった。初発時の血小板数毎の各治療頻度(グロブリン、ステロイド、無治療)は、1x104/μl未満の症例では33例、4例、1例、1~1.9x104/μlの症例では18例、5例、2例、2~2.9x104/μlの症例では3例、0例、4例であった。3x104/μl以上の症例は全例無治療で観察されていた。H.pylori感染は2例(急性型1例、慢性型1例)に認められたが、いずれも除菌療法無しで血小板数は改善した。慢性型と診断された症例の発症年齢は6歳2ヶ月で、急性型の2歳10ヶ月より有意に年齢が高かった。性別は男7例女8例、初発時血小板数の平均は10733/μlで急性型(14920/μl)と有意な差を認めなかった。5例は7ヶ月~2年6ヶ月で血小板数10x104/μl以上に改善した。脾臓摘出は3例に行われ、全例血小板数は正常化した。他の7例は現在も血小板減少が持続しているが、5 x104/μl未満は3例のみであった。慢性型の1例と発症後3ヶ月の1例が、血小板数1x104/μl未満で多数の出血斑が持続するため少量プレドニゾロンの内服を続けている。 【結語】小児ITP患者の慢性型は19.0%であった。発症年齢が高い症例での慢性型の頻度が高かったが、その他に慢性型に特徴的な臨床所見はなかった。現時点で運動制限が必要な5 x104/μl未満の症例は79例中4例のみ(5.1%)であり、慢性型でも長期予後は比較的良好であった。H.pylori感染の関与は成人と異なり低いと考えられた。 |
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Bibliography: | 1D05 |
ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
DOI: | 10.14879/nnigss.56.0.54.0 |