蓄痰容器を用いた気管支擦過細胞診の基礎的検討

【はじめに】肺ガン検診の精密検査で行われる気管支擦過細胞診(以下BBC)は主に肺癌診断の補助として古くから用いられている診断領域の検査である。結果は治療方針を左右するほど重要な検査である。従来複数枚のスライドガラスに塗布された患者の一部を検索していたが様々なアーチファクトによりしばしば診断に苦慮する場面に遭遇する。また蓄痰容器は、剥離細胞を良好に保存するため肺ガン検診で利用されている。今回我々は当院呼吸器内科の協力の下、精度向上の観点から蓄痰容器を用いたBBC処理を試みたのでその細胞像を供覧し併せて成績を報告する。【対象及び方法】対象は平成17年1月より平成18年6月までの期間で施行したBBC...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 56; p. 81
Main Authors 塩崎, 正樹, 山本, 真, 廣瀬, 尚樹, 風間, 梨江, 西田, 正人, 菊地, 慶介, 樋田, 郁治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2007
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.56.0.81.0

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Summary:【はじめに】肺ガン検診の精密検査で行われる気管支擦過細胞診(以下BBC)は主に肺癌診断の補助として古くから用いられている診断領域の検査である。結果は治療方針を左右するほど重要な検査である。従来複数枚のスライドガラスに塗布された患者の一部を検索していたが様々なアーチファクトによりしばしば診断に苦慮する場面に遭遇する。また蓄痰容器は、剥離細胞を良好に保存するため肺ガン検診で利用されている。今回我々は当院呼吸器内科の協力の下、精度向上の観点から蓄痰容器を用いたBBC処理を試みたのでその細胞像を供覧し併せて成績を報告する。【対象及び方法】対象は平成17年1月より平成18年6月までの期間で施行したBBCのうちスライドガラス塗布後の擦過器具を蓄痰容器で洗浄後に提出された206例の223件とした。方法は蓄痰容器からオートスメア法により回収された材料(以下AS)と従来法のスライドガラス材料(以下SG)の間で一致率の比較検討を行った。また併せて対象において組織診が行なわれた170例について最終診断である病理組織学的な側面からの比較検討も同様に行った。さらに細胞診断業務量の差異について鏡顕範囲の面積、鏡顕の所要時間および検査に関わる費用の視点からASとSGの間で比較検討を行なった。【結果】ASとSGの一致率は209件94%であった。組織診との一致率はASで137件86%、SGで135件80%であった。またAS及びSGを合わせた細胞診全体では156例83%であった。さらに業務量の差異に関する検討では一枚当りの費用ではASがSGの約2倍であった。標本枚数はAS223枚、SG1434枚のため鏡検所要時間はASがSGの約1/7であった。【考察】組織診との一致率はASで高い傾向が見られ精度向上に寄与すると思われた。また今回の検討ではSG作成後にASを実施したためASに偽陰性が増えたが、二例はASのみ陽性を示しており本法の必要性がうかがえた。さらに業務量の差異では一枚当りの費用がASで約2倍増加するもののSGの標本枚数が1/7となることで、総体的な費用の圧縮と鏡検所要時間の大幅な短縮による効率化がはかられた。くわえてBBCの採取から標本作成までの手順が画一化されるため手技の標準化が可能であると思われた。【結語】我々臨床検査技師はその技術を活かし地域住民の健康を守っている。効率化によって多くの生命を救う事が出来ると思われた。また機器の先進化が進む臨床検査の中で細胞診断はまだ発展の途上にある。今後も精度向上を踏まえつつ効率的な業務となるように取り組んで行きたいと思われる。
Bibliography:1E08
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.56.0.81.0