気管支に発生した悪性黒色腫の一例

症例は54歳男性。主訴は発熱、喀痰、咳嗽で、胸部X線と胸部CTにて肺癌が疑われた。経気管支鏡下肺生検を施行し、悪性黒色腫と診断された。原発巣と考えられる皮膚病変は発見できず、診断時には多発転移をきたしており、現在化学療法を施行している。悪性黒色腫は皮膚を原発とすることが非常に多いが、まれに粘膜や眼や肺に発生することがある。今回呼吸器症状を呈して発見された悪性黒色腫を経験したので報告する。悪性黒色腫は皮膚原発のことが非常に多いが、この症例では原発を疑うような明らかな皮膚病変は認められなかった。腹部CT、腹部エコーにて多発肝転移、腹腔内リンパ節転移、腹膜播種、胸膜播種を認め、stage_IV_の診...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 56; p. 38
Main Author 石井, 梨絵
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2007
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.56.0.38.0

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Summary:症例は54歳男性。主訴は発熱、喀痰、咳嗽で、胸部X線と胸部CTにて肺癌が疑われた。経気管支鏡下肺生検を施行し、悪性黒色腫と診断された。原発巣と考えられる皮膚病変は発見できず、診断時には多発転移をきたしており、現在化学療法を施行している。悪性黒色腫は皮膚を原発とすることが非常に多いが、まれに粘膜や眼や肺に発生することがある。今回呼吸器症状を呈して発見された悪性黒色腫を経験したので報告する。悪性黒色腫は皮膚原発のことが非常に多いが、この症例では原発を疑うような明らかな皮膚病変は認められなかった。腹部CT、腹部エコーにて多発肝転移、腹腔内リンパ節転移、腹膜播種、胸膜播種を認め、stage_IV_の診断となった。10月13日より化学療法を開始し、現在までで3クール施行しているが、腫瘍は増大してきている。悪性黒色腫は病期が進行していない場合は手術療法が第一選択であるが、遠隔転移を生じた場合は手術療法の適応はなく全身化学療法が治療の主体となる。現在のところfirst choiceとしてはダカルバジン、塩酸ニムスチン、ビンクリスチンによるDAV療法もしくは、ダカルバジンのかわりにペプロマイシンを使用するPAP療法が行われている。これらの化学療法の奏功率は部分緩解を含めて2~3割程度と言われている。悪性黒色腫はメラニン色素を産生する細胞であるメラノサイト由来の腫瘍である。メラノサイトは皮膚、眼、中枢神経系などに分布し、悪性黒色腫の原発部位としては皮膚や眼球が多い。肺原発の悪性黒色腫は非常にまれで、肺腫瘍全体の約0.01%ほどと言われているが、その反面肺は皮膚や眼球原発の悪性黒色腫の転移の好発部位であり、肺原発の悪性黒色腫と診断するには慎重な検討が必要である。(肺原発の悪性黒色腫の診断基準としては_丸1_単発性の肺腫瘍であること _丸2_肺門に近い病変であること _丸3_皮膚や粘膜、眼球などに加療もしくは切除の既往がないこと _丸4_免疫染色あるいは電顕による悪性黒色腫の確定診断 _丸5_剖検にて他の部位に原発病変を認めないこと等が挙げられる)肺原発の悪性黒色腫の特徴としては、中枢気道に原発することが多く、気管支鏡では中枢気道に突出するポリープ状の腫瘍を認める。この症例は肺原発の悪性黒色腫の特徴と類似しており、肺原発の可能性が考えられた。悪性黒色腫は非常に転移を来しやすく予後は不良である(悪性黒色腫の予後は、遠隔転移のあるものでは平均生存期間1~2年ほどといわれている。Stage_IV_の5年生存率は0%)。早期発見できれば外科的切除が可能なこともあるため、気管支内腔にポリープ状に発育する腫瘍として、非常に稀ではあるが鑑別診断として考えておく必要がある。
Bibliography:1C14
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.56.0.38.0