当院における上部消化管内視鏡治療の現状

背景:拡大内視鏡検査や超音波内視鏡検査による詳細な病変の検討が可能となり早期胃癌は内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)によって治療される症例が増加している。その一方でESDの適応拡大や高齢者に対する安全性などについては議論のあるところである。今回我々は、最近当院にてESDを施行した症例につき発見に至った背景、安全性、治療効果等について検討した。 対象:2006年4月より2009年3月までの期間において当院で上部消化管ESDを施行した53症例である。 結果:年齢は49歳から85歳(平均67歳)であり、入院日数は7日から最長41日(平均12.3日)であった。発見に至ったきっかけとしては、ドックや他疾患...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 58; p. 40
Main Authors 國井 伸, 荒川 直之, 青木 孝太, 阿知波 宏一, 久保田 稔, 石川 大介, 水谷 哲也, 渡辺 一正, 奥村 明彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE 2009
一般社団法人 日本農村医学会
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:背景:拡大内視鏡検査や超音波内視鏡検査による詳細な病変の検討が可能となり早期胃癌は内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)によって治療される症例が増加している。その一方でESDの適応拡大や高齢者に対する安全性などについては議論のあるところである。今回我々は、最近当院にてESDを施行した症例につき発見に至った背景、安全性、治療効果等について検討した。 対象:2006年4月より2009年3月までの期間において当院で上部消化管ESDを施行した53症例である。 結果:年齢は49歳から85歳(平均67歳)であり、入院日数は7日から最長41日(平均12.3日)であった。発見に至ったきっかけとしては、ドックや他疾患(胃の病変を含む)の経過観察中に発見されたものが43例(81%)を占め、症状を有したものは10例(17%)のみであった。無症状で発見された43例中ドックと胃癌検診がきっかけで発見されたものが18例(42%)存在した。術前診断は拡大内視鏡と超音波内視鏡によってなされ7例が胃腺腫、46例が早期胃癌であった。胃腺腫と診断された7例中2例は摘出標本中に癌が発見された。次に安全性について検討したところ、術中の多量出血にて輸血を施行した症例が2例ありこのうち1例はESD中止となり手術となった。小穿孔が疑われた症例が3例(いずれも保存的治療にて軽快)、誤嚥による低酸素血症(ESD中止、5日後再ESD)、マロリーワイス症候群を発症した症例が各1例あった。治療効果について検討したところ、5例に遺残再発が認められた。切除病変の病理学的検討において組織の変性などで水平断が端判定不能と診断された症例からの再発がほとんどであり、遺残再発までの期間は2か月から2年であった。また、5例において異所性再発あるいは胃の多発癌を認めた。 結論:ESDの適応となる早期癌の発見には任意型あるいは胃癌検診が有用であると考えられた。また、種々の合併症を有する高齢者に対してもESDは比較的安全に施行できると考えられたが、一方で異所性の再発や胃の多発癌症例が比較的多く存在しており、治療施行後も長期間にわたる注意深い経過観察が必要であることを再認識した。
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.58.0.40.0