東海地区の医療機関における輸血感染症対策の現状 輸血感染症対策に関するアンケート調査報告

【はじめに】2004年9月の「輸血療法の実施に関する指針」の一部改正, および翌年3月の「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」によって輸血前後に測定するウィルスマーカーが具体的に示され, 輸血前後の検体保管が求められた. この様な背景の下, 輸血感染症に対する一連の対策が医療現場で採られているかどうか, 日本輸血細胞治療学会東海支部会領域の医療機関に対しアンケート調査を実施した. 【対象・方法】2005年11月, 東海4県の232医療施設を対象に, (1) 施設情報, (2) 輸血部門管理体制, (3) 輸血前後の感染症検査, (4) 輸血前後の検体保管, (5) 説明と同意の内容, (6)...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 53; no. 6; pp. 607 - 612
Main Authors 大久保, 井久子, 加藤, 栄史, 浅井, 真理子, 宇留間, 元昭, 安藤, 高宣, 林, 恵美, 高本, 滋, 神谷, 忠, 片井, 明子, 丹羽, 玲子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 10.12.2007
日本輸血・細胞治療学会
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ISSN1881-3011
1883-0625
DOI10.3925/jjtc.53.607

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Summary:【はじめに】2004年9月の「輸血療法の実施に関する指針」の一部改正, および翌年3月の「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」によって輸血前後に測定するウィルスマーカーが具体的に示され, 輸血前後の検体保管が求められた. この様な背景の下, 輸血感染症に対する一連の対策が医療現場で採られているかどうか, 日本輸血細胞治療学会東海支部会領域の医療機関に対しアンケート調査を実施した. 【対象・方法】2005年11月, 東海4県の232医療施設を対象に, (1) 施設情報, (2) 輸血部門管理体制, (3) 輸血前後の感染症検査, (4) 輸血前後の検体保管, (5) 説明と同意の内容, (6) 輸血製剤による細菌感染症への対応について調査した. 【結果】回答施設数139, 回答率59.9%であった. 輸血前後の感染症検査を指針通りに実施している施設は前後共に2割程度と少なく, 実施施設の実際の輸血前患者に対する実施率も半数以下であった. 指針通り検査を実施しない理由として, 輸血前は「検査にお金がかかる」「事後に保管検体で対応する」, 輸血後は「輸血後の検査時期の把握が困難」が最も多かった. 輸血前検体は, 赤血球輸血に関しては84.9%の施設が保管していたが, 全ての輸血で保管している施設は40.3%であった. また, 輸血後検体について何らかの保管を行っている施設は20.8%しか認められなかった. 2004年9月改定の「輸血療法の実施に関する指針 (改定版)」で示された説明と同意を得るべき項目の内, 輸血感染症対策に関する項目についての記載または記載予定施設を77%認めたが, それ以外の項目についての記載または記載予定施設は5割以下であった. 細菌感染症対策として, 使用済みバッグの保管が望まれているが, ほとんどの施設が実施上不可能など否定的な回答であった. 【結論】2004年に設けられた生物由来製品感染症等被害救済制度により輸血後肝炎など感染性輸血副作用を発症した患者が救済出来るようになった. しかしながら, 適応を受けるには輸血による感染である必要がある. それを証明するためには指針通りの輸血前後の感染症検査が重要である. しかし, 東海地区では指針通りの検査実施施設は少なく, 全ての輸血に対し輸血前検体を保管している施設も半数以下であった. この様な現状を考えると, 指針通りに感染症検査を実施するよう促すことは勿論であるが, 輸血後肝炎などの輸血感染症発症例に対しても事後の対応が可能なように, 全ての輸血患者の輸血前検体を保管する体制を構築することが急務と思われる.
ISSN:1881-3011
1883-0625
DOI:10.3925/jjtc.53.607