水産工学における新たを価値観

20世紀は無限の力を持つ海として人類は対応してきたが,生物生産力は1億トン/年が限界,環境浄化力も有限で海洋汚染が顕在化し, 21世紀における最大の問題として持ち越すことになった。我が国では狩猟的漁業から作る漁業への萌芽があり,沿岸漁場整備開発法(1974)による事業は世界に先駆けた21世紀の課題であり,これを支える水産工学の技術革新の開花が切望される。人類の当面する食糧,環境の二大課題における水産工学の役割は大きい。食糧資源生産システムにおいては産卵・保育場や種苗放流場等の初期生存を助長する環境の造成による優良種の増殖,生体元素(肥料)濃度の適正化による総資源量の増大,選択漁法,装置化漁法の...

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Published in日本水産工学会誌 Vol. 38; no. 3; pp. 281 - 289
Main Author 中村, 充
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本水産工学会 2002
The Japanese Society of Fisheries Engineering
Subjects
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ISSN0916-7617
2189-7131
DOI10.18903/fisheng.38.3_281

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Summary:20世紀は無限の力を持つ海として人類は対応してきたが,生物生産力は1億トン/年が限界,環境浄化力も有限で海洋汚染が顕在化し, 21世紀における最大の問題として持ち越すことになった。我が国では狩猟的漁業から作る漁業への萌芽があり,沿岸漁場整備開発法(1974)による事業は世界に先駆けた21世紀の課題であり,これを支える水産工学の技術革新の開花が切望される。人類の当面する食糧,環境の二大課題における水産工学の役割は大きい。食糧資源生産システムにおいては産卵・保育場や種苗放流場等の初期生存を助長する環境の造成による優良種の増殖,生体元素(肥料)濃度の適正化による総資源量の増大,選択漁法,装置化漁法の開発による資源保護と省力・高品質漁業の構築,これらを支える測器,船舶部門の充実,漁業生産基盤の整備による漁業者の就業及び生活向上が必要となる。海の環境についてはその機能を定量的に明らかにし,局所環境から巨視的環境に至るまでの総合視点で対応する技術及びシステムが重要となる。これらの多くは,生態系環境に係わるものであり,定量的,演繹論的学問,技術の開発が急がれる。
ISSN:0916-7617
2189-7131
DOI:10.18903/fisheng.38.3_281