乳腺髄様癌における細胞診と組織診の不一致例について
〈緒言〉乳腺髄様癌は、本邦では約1~2%と比較的まれな腫瘍であり、明瞭な核小体と豊富な細胞質を持つ大型異型細胞の充実性増殖を特徴とする比較的予後良好な腫瘍である。リンパ球浸潤を伴うことが特徴とされているが、リンパ球浸潤を欠く症例も報告されている。今回我々は、髄様癌における細胞診と組織診の不一致例について、組織診断所見・細胞診断所見・免疫染色所見について比較再検討を行なった。 〈対象と方法〉1999年から2007年までに当院外科にて穿刺吸引細胞診と組織診を施行した乳癌症例600例中、細胞診で髄様癌とは判定できず、組織診断にて髄様癌と診断された5例について検討した。また、細胞診では髄様癌と判定した...
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Published in | Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 57; p. 96 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本農村医学会
2008
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.57.0.96.0 |
Cover
Summary: | 〈緒言〉乳腺髄様癌は、本邦では約1~2%と比較的まれな腫瘍であり、明瞭な核小体と豊富な細胞質を持つ大型異型細胞の充実性増殖を特徴とする比較的予後良好な腫瘍である。リンパ球浸潤を伴うことが特徴とされているが、リンパ球浸潤を欠く症例も報告されている。今回我々は、髄様癌における細胞診と組織診の不一致例について、組織診断所見・細胞診断所見・免疫染色所見について比較再検討を行なった。 〈対象と方法〉1999年から2007年までに当院外科にて穿刺吸引細胞診と組織診を施行した乳癌症例600例中、細胞診で髄様癌とは判定できず、組織診断にて髄様癌と診断された5例について検討した。また、細胞診では髄様癌と判定したが、組織診では他の組織型と診断された3例についても検討をおこなった。 〈結果〉細胞診で髄様癌と判定できずに、組織診で髄様癌と診断された5例の内訳は、class_V_が3例、class_II_が1例、class_I_が1例であった。class_V_とした3例については、いずれも細胞診では浸潤性乳管癌と判定していた。しかしながら、この3例について再鏡検したところ、背景にリンパ球の出現を確認できるものであり、注意深く観察する必要があったといえた。また、class_II_とされた1例については、泡沫細胞を背景にアポクリン化生を伴う乳管細胞をシート状に認めることから、アポクリン化生との判定を行なっていた。超音波診断上も嚢胞性病変を示す所見であり、髄様癌の特徴とされる異型の強い悪性細胞の出現はみられなかった。また、class_I_とされた1例については、極少数の異型のみられない乳管細胞と中程度数の脂肪細胞を認める症例であった。このclass_I_の症例については、出現細胞数が非常に少なく、検体不適にすべき標本であった。 また、細胞診では髄様癌と判定し、組織診では他の組織型であった症例は3例であり、乳頭腺管癌1例・充実腺管癌2例であった。いずれの症例についても、核異型は強く、髄様癌を思わせる背景のリンパ球も多数出現していた。 〈考察〉乳腺髄様癌は背景のリンパ球を特徴とする核異型の強い特殊型の乳癌であり、細胞診での判定では背景のリンパ球をよく観察する必要があるとされている。しかしながら、リンパ球の出現のみにとらわれ過ぎると、リンパ球浸潤を伴う浸潤性乳管癌を誤って髄様癌と判定してしまう可能性がある。また、今回の症例にはなかったが、リンパ球浸潤のない髄様癌を他の組織型と判定してしまう可能性もある。髄様癌の特徴としては、泡沫状の細胞質や核の比較的微細なクロマチン、薄い核縁等があげられる。個々の細胞における細胞質の状態や核クロマチンの性状、核縁の状態も詳細に観察する必要があると考えられた。また、細胞集塊の出現のある場合は管状構造の有無を注意深く観察することで鑑別の補助となると考えられた。 |
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Bibliography: | 1F048 |
ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
DOI: | 10.14879/nnigss.57.0.96.0 |