魚骨誤嚥による食道穿孔と食道周囲膿瘍を発症し、保存的に治癒し得た1例
本邦においては、食生活から魚骨片に接する機会は比較的多いと思われるが、魚骨による食道穿孔は比較的まれな疾患である。ただし、合併症によっては食道穿孔は重篤となり時期を逸すれば予後不良となりうる。鯛の骨による食道穿孔により食道周囲膿瘍を合併したが、保存的に治癒し得た1例を経験した。症例は77歳男性。平成20年3月の夕食に魚を摂食した。食直後より食物のつかえるような感じがあった。翌日は粥食としたが、心窩部痛が出現、しだいに増悪したため、翌々日近医受診。上部消化管造影にて造影剤(バリウム)の縦隔内への漏出を確認され、直ちに紹介受診となった。胸部CTにて胸部下部食道壁に刺入した魚骨と周囲に径30mm大の...
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Published in | Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 59; p. 85 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本農村医学会
2010
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.59.0.85.0 |
Cover
Summary: | 本邦においては、食生活から魚骨片に接する機会は比較的多いと思われるが、魚骨による食道穿孔は比較的まれな疾患である。ただし、合併症によっては食道穿孔は重篤となり時期を逸すれば予後不良となりうる。鯛の骨による食道穿孔により食道周囲膿瘍を合併したが、保存的に治癒し得た1例を経験した。症例は77歳男性。平成20年3月の夕食に魚を摂食した。食直後より食物のつかえるような感じがあった。翌日は粥食としたが、心窩部痛が出現、しだいに増悪したため、翌々日近医受診。上部消化管造影にて造影剤(バリウム)の縦隔内への漏出を確認され、直ちに紹介受診となった。胸部CTにて胸部下部食道壁に刺入した魚骨と周囲に径30mm大の膿瘍を認め、大動脈には異常所見を認めなかった。上部消化管内視鏡にて切歯より35cmの食道壁に刺入した魚骨を認めたためオーバーチューブを挿入し、鰐口型把持鉗子を用いて直視下で抜去した。中心静脈栄養管理と抗生剤投与による治療を開始した。入院3日後に症状は軽快、2週後のCTで膿瘍はほぼ消失していた。食事開始後も経過良好にて退院。食道穿孔では発症早期の時点で的確に診断することが重要である。本症例のように保存的に対応できる症例もあり、内視鏡的手技を駆使した保存的治療も行われている。しかし、胸腔内穿破や診断が遅れ縦隔炎や膿胸を併発した症例では、救命を第一に、外科手術を選択することが必要と思われる。 |
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Bibliography: | P1-A2-1 |
ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
DOI: | 10.14879/nnigss.59.0.85.0 |