杙創の臓器損傷評価における腹腔鏡手術の有用性と問題点を共有した1例

症例は40歳の男性で,転落事故で左胸部を打撲し,プランターの杭が会陰部に刺入した.転倒後に杭は自然抜去した.肛門と尾骨の間に刺入創を認め,下腹部の圧痛と板状硬を認めた.CTで下部直腸損傷,左第3肋骨骨折,胸部皮下気腫および左肺挫傷と診断した.経肛門的直腸縫合,審査腹腔鏡と腹腔鏡下人工肛門造設の方針とした.杭は下部直腸背側から前壁左側を貫通しており,経肛門的に貫通部の直腸縫合を行った.審査腹腔鏡では腹膜翻転部直上の直腸左側の腹膜損傷以外の腹腔内臓器損傷は認めなかった.腹腔鏡下S状結腸人工肛門造設術後に改めて腹腔内を観察したところ,肝鎌状間膜付着部左側の横隔膜に3 cmの損傷を認め,小開腹下に縫合...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 48; no. 12; pp. 971 - 976
Main Authors 安田, 洋, 門野, 潤, 大迫, 政彦, 井上, 真岐, 石崎, 直樹, 基, 俊介, 中薗, 俊博, 槐島, 健太郎, 藏元, 慎也, 井本, 浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2015
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は40歳の男性で,転落事故で左胸部を打撲し,プランターの杭が会陰部に刺入した.転倒後に杭は自然抜去した.肛門と尾骨の間に刺入創を認め,下腹部の圧痛と板状硬を認めた.CTで下部直腸損傷,左第3肋骨骨折,胸部皮下気腫および左肺挫傷と診断した.経肛門的直腸縫合,審査腹腔鏡と腹腔鏡下人工肛門造設の方針とした.杭は下部直腸背側から前壁左側を貫通しており,経肛門的に貫通部の直腸縫合を行った.審査腹腔鏡では腹膜翻転部直上の直腸左側の腹膜損傷以外の腹腔内臓器損傷は認めなかった.腹腔鏡下S状結腸人工肛門造設術後に改めて腹腔内を観察したところ,肝鎌状間膜付着部左側の横隔膜に3 cmの損傷を認め,小開腹下に縫合閉鎖した.胸腔鏡検査で心・肺損傷は認めなかった.術後,無気肺を併発したが経過は良好であった.横隔膜損傷を合併している症例では,術後の肺合併症の発症を考慮し,腹腔鏡操作にこだわらないことも重要である.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2014.0244