腹腔内褐色脂肪腫の1例

症例は66歳の女性で,2014年9月に当院内科でのCTで左上腹部腫瘤を指摘され,6年前と比較し緩徐な増大傾向であった.造影CTでは結腸脾彎曲外側に接する85×55×35 mm大の多血性腫瘤を認めた.動脈血は下腸間膜動脈から得ており,静脈血は上腸間膜静脈に流入していた.下部消化管内視鏡検査では下行結腸に異常所見は認めなかった.以上より,下行結腸粘膜下腫瘍の術前診断で手術を施行した.腹腔鏡下に下行結腸とともに腫瘍を授動して小開腹し体外で観察すると,色調は茶褐色で下行結腸とは容易に離れ,腫瘍近傍で動静脈を結紮し摘出した.病理組織学的には褐色色素を含む脂肪細胞の結節性の増生を認め,褐色脂肪腫と診断した...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 50; no. 11; pp. 905 - 912
Main Authors 雄谷, 慎吾, 生田, 宏次, 青野, 景也, 小川, 明男, 渡邊, 哲也, 服部, 正興, 安藤, 公隆, 山口, 貴之, 浅野, 昌彦, 溝口, 良順
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2017
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Summary:症例は66歳の女性で,2014年9月に当院内科でのCTで左上腹部腫瘤を指摘され,6年前と比較し緩徐な増大傾向であった.造影CTでは結腸脾彎曲外側に接する85×55×35 mm大の多血性腫瘤を認めた.動脈血は下腸間膜動脈から得ており,静脈血は上腸間膜静脈に流入していた.下部消化管内視鏡検査では下行結腸に異常所見は認めなかった.以上より,下行結腸粘膜下腫瘍の術前診断で手術を施行した.腹腔鏡下に下行結腸とともに腫瘍を授動して小開腹し体外で観察すると,色調は茶褐色で下行結腸とは容易に離れ,腫瘍近傍で動静脈を結紮し摘出した.病理組織学的には褐色色素を含む脂肪細胞の結節性の増生を認め,褐色脂肪腫と診断した.褐色脂肪腫は若年成人の大腿部などに好発するまれな良性腫瘍である.今回,我々は術前診断には至らなかったが,極めてまれな下行結腸に接した腹腔内褐色脂肪腫の1例を腹腔鏡補助下に切除しえたので報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2016.0229