片側性唇顎口蓋裂患児におけるスマイル時の口唇・頬部運動の三次元解析

唇顎口蓋裂患者の口唇形成術後の静的な顔貌については多くの研究が行われ,軟組織と硬組織の形態の改善が示されている。しかし,スマイル時の軟組織の動きについては不明な点がみられる。そこで我々は,片側性唇顎口蓋裂患者の口唇形成術後のスマイル時の口唇および頬部の三次元的移動様相について検討した。 被験者は,松本歯科大学病院矯正歯科を受診した片側性唇顎口蓋裂の男児14名(平均年齢5.3歳)である。スマイル時の口唇と頬部の三次元運動を,ステレオ写真で解析した。また,正面顔面形態を正面セファログラムで評価した。さらに,正面顔面形態とスマイル時の口唇と頬部の運動の関連も検討した。 その結果,患側口角は健側口角に...

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Published in日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 46; no. 3; pp. 145 - 152
Main Authors 深沢, 香菜子, 丸山, 歩美, 川原, 良美, 杠, 俊介, 山田, 一尋, 楢本, 達也, 影山, 徹, 中根, 隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口蓋裂学会 2021
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ISSN0386-5185
2186-5701
DOI10.11224/cleftpalate.46.145

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Summary:唇顎口蓋裂患者の口唇形成術後の静的な顔貌については多くの研究が行われ,軟組織と硬組織の形態の改善が示されている。しかし,スマイル時の軟組織の動きについては不明な点がみられる。そこで我々は,片側性唇顎口蓋裂患者の口唇形成術後のスマイル時の口唇および頬部の三次元的移動様相について検討した。 被験者は,松本歯科大学病院矯正歯科を受診した片側性唇顎口蓋裂の男児14名(平均年齢5.3歳)である。スマイル時の口唇と頬部の三次元運動を,ステレオ写真で解析した。また,正面顔面形態を正面セファログラムで評価した。さらに,正面顔面形態とスマイル時の口唇と頬部の運動の関連も検討した。 その結果,患側口角は健側口角に比べ,有意に大きく外方,上方,後方に移動した。下唇中央部の下方移動量は上唇中央部の上方移動量より有意に大きかった。一方,頬部は患側と健側の移動距離に有意差はなかった。 口唇と頬部の移動量と正面顔面形態の関連では,患側と健側の下顎骨幅差とMe偏位量は口角水平方向の患側と健側の移動量差と有意な正の相関を示し,患側と健側の上顎骨高差と下顎骨高差は,口角垂直方向の患側と健側の移動量の差と有意な負の相関を示した。 これは,片側性唇顎口蓋裂患者では,スマイル時に患側口角が,健側よりもより上方,外方,後方に移動し,その結果非対称なスマイルを生じていることが示された。また,非対称なスマイルは,正面顔面形態に関連していた。
ISSN:0386-5185
2186-5701
DOI:10.11224/cleftpalate.46.145