膵体尾部癌に対する術前化学療法と腹腔動脈合併尾側膵切除後にneedle tract seedingによる胃壁転移を来し胃全摘術を施行した1例

症例は63歳の男性で,腹腔動脈周囲神経叢浸潤を伴う切除可能境界膵体尾部癌に対し,超音波内視鏡下針生検で腺癌と診断し,術前化学療法を行い,腹腔動脈合併尾側膵切除術を施行した.術後補助化学療法中の術後10か月で針生検の穿刺経路である胃体部後壁に粘膜下腫瘍が出現し,生検で腺癌と診断され胃全摘術を施行した.免疫組織学的所見が膵癌原発巣と一致し,RAS遺伝子変異陽性も合わせ,needle tract seedingによる膵癌胃壁転移と診断した.胃領域リンパ節に12個の転移を認めた.胃切除から2か月後に無数の多発肝転移が出現し,4か月後に癌死した.膵癌のneedle tract seedingは,術前およ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 54; no. 11; pp. 813 - 821
Main Authors 田原, 俊哉, 首藤, 毅, 羽田野, 直人, 石山, 宏平, 清水, 亘, 鈴木, 崇久, 尾上, 隆司, 清水, 洋祐, 倉岡, 和矢, 田代, 裕尊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.11.2021
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は63歳の男性で,腹腔動脈周囲神経叢浸潤を伴う切除可能境界膵体尾部癌に対し,超音波内視鏡下針生検で腺癌と診断し,術前化学療法を行い,腹腔動脈合併尾側膵切除術を施行した.術後補助化学療法中の術後10か月で針生検の穿刺経路である胃体部後壁に粘膜下腫瘍が出現し,生検で腺癌と診断され胃全摘術を施行した.免疫組織学的所見が膵癌原発巣と一致し,RAS遺伝子変異陽性も合わせ,needle tract seedingによる膵癌胃壁転移と診断した.胃領域リンパ節に12個の転移を認めた.胃切除から2か月後に無数の多発肝転移が出現し,4か月後に癌死した.膵癌のneedle tract seedingは,術前および術後化学療法でも防止困難であり,外科切除を企図した膵癌において,穿刺経路が切除範囲外の超音波内視鏡下針生検は,そのリスクを認識して施行する必要がある.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2020.0112