食道胃接合部に生じた胎児消化管類似癌の1例

症例は61歳の男性で,食後のつかえ感を主訴に近医を受診し,当院へ紹介となった.食道胃接合部に1型腫瘍を認め,生検で中分化型腺癌と診断し,胃全摘術,腹部食道切除術を施行した.病理組織学的検査所見では,異型円柱上皮が乳頭状構造をとる高分化型腺癌を認め,淡明な細胞質を持ち,核異型は高度であり,免疫染色検査でAFP陽性,Glypican3陽性を示し,胎児消化管類似癌と診断した.リンパ節転移はみられなかったため,術後補助化学療法は施行せず,経過観察としていた.術後2年目の胸腹部CTで右肺転移を認めたため,右肺下葉切除術を施行した.病理組織学的検査でも,食道胃接合部癌の転移として矛盾しない所見であった.本...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 55; no. 12; pp. 743 - 749
Main Authors 原, 康之, 西田, 晶子, 鈴木, 健介, 萩原, 資久, 赤羽根, 綾香, 橋爪, 英二, 岩本, 尚太朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.12.2022
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2022.0020

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Summary:症例は61歳の男性で,食後のつかえ感を主訴に近医を受診し,当院へ紹介となった.食道胃接合部に1型腫瘍を認め,生検で中分化型腺癌と診断し,胃全摘術,腹部食道切除術を施行した.病理組織学的検査所見では,異型円柱上皮が乳頭状構造をとる高分化型腺癌を認め,淡明な細胞質を持ち,核異型は高度であり,免疫染色検査でAFP陽性,Glypican3陽性を示し,胎児消化管類似癌と診断した.リンパ節転移はみられなかったため,術後補助化学療法は施行せず,経過観察としていた.術後2年目の胸腹部CTで右肺転移を認めたため,右肺下葉切除術を施行した.病理組織学的検査でも,食道胃接合部癌の転移として矛盾しない所見であった.本人の希望で術後補助化学療法は行わず経過をみていたが,肺転移切除後1年10か月無再発生存を得られている.今回,我々は食道胃接合部に生じた大変まれな組織型である胎児消化管類似癌を経験したため報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2022.0020