細胞障害性T細胞の浸潤が認められた膵退形成癌の長期生存例

症例は72歳の女性で,多数のリンパ節腫大を伴う4 cm大の膵頭部腫瘍に対し幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行した.病理組織学的検査所見ではリンパ節転移陽性の多形細胞型膵退形成癌と診断されたが,術後4年経過後も無再発生存中である.膵退形成癌は予後不良とされているが,長期生存例も報告されている.その特徴は不明であるが,過去の報告からは免疫応答の関与が長期生存に寄与する可能性が示唆されている.本例も間質に好中球とCD8陽性リンパ球の顕著な浸潤を認め,同様の機序が推察された.治療は切除が第一選択で,報告された長期生存例も全て切除例である.本例は多数の腫大リンパ節を認めたものの,画像所見から通常型膵管癌以...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 46; no. 12; pp. 929 - 937
Main Authors 藤原, 康博, 谷口, 雅彦, 唐崎, 秀則, 鈴木, 茂貴, 新居, 利英, 今井, 浩二, 松坂, 俊, 及川, 賢輔, 古川, 博之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2013
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2012.0331

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Summary:症例は72歳の女性で,多数のリンパ節腫大を伴う4 cm大の膵頭部腫瘍に対し幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行した.病理組織学的検査所見ではリンパ節転移陽性の多形細胞型膵退形成癌と診断されたが,術後4年経過後も無再発生存中である.膵退形成癌は予後不良とされているが,長期生存例も報告されている.その特徴は不明であるが,過去の報告からは免疫応答の関与が長期生存に寄与する可能性が示唆されている.本例も間質に好中球とCD8陽性リンパ球の顕著な浸潤を認め,同様の機序が推察された.治療は切除が第一選択で,報告された長期生存例も全て切除例である.本例は多数の腫大リンパ節を認めたものの,画像所見から通常型膵管癌以外の特殊な組織型を想定して切除し長期生存が得られている貴重な症例である.本疾患の治療戦略を明らかにするためには,欧米と分類を統一して複雑な用語を整理し,多数例での解析を行うことが重要であると考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2012.0331