若年発症の直腸癌を契機にTP53遺伝子変異を持つLi-Fraumeni syndromeの家系と判明した1例

患者は17歳の女性で,3か月前からの下腹部痛,血便を主訴に来院した.下部消化管内視鏡検査で直腸S状部に全周性狭窄を認め,生検でadenocarcinomaが認められた.腹部CTで遠隔転移を認めず,cStage IIIaの直腸癌の診断で,腹腔鏡下高位前方切除術を施行した.最終診断はStage IIIbの直腸癌で術後補助化学療法を外来で施行した.若年発症の悪性腫瘍であり,兄が骨肉腫で死亡,母親が上顎骨骨肉腫,右乳癌,延髄神経鞘腫に罹患した家族歴があることから,Li-Fraumeni 症候群の家系の可能性を考え遺伝子解析を行った結果,患者と母親にTP53遺伝子の変異が認められた.同症候群は常染色体優...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 49; no. 11; pp. 1170 - 1178
Main Authors 松岡, 義, 篠崎, 浩治, 小澤, 広輝, 中西, 亮, 清水, 徹一郎, 石田, 隆, 寺内, 寿彰, 木全, 大, 小林, 健二, 尾形, 佳郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2016
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Summary:患者は17歳の女性で,3か月前からの下腹部痛,血便を主訴に来院した.下部消化管内視鏡検査で直腸S状部に全周性狭窄を認め,生検でadenocarcinomaが認められた.腹部CTで遠隔転移を認めず,cStage IIIaの直腸癌の診断で,腹腔鏡下高位前方切除術を施行した.最終診断はStage IIIbの直腸癌で術後補助化学療法を外来で施行した.若年発症の悪性腫瘍であり,兄が骨肉腫で死亡,母親が上顎骨骨肉腫,右乳癌,延髄神経鞘腫に罹患した家族歴があることから,Li-Fraumeni 症候群の家系の可能性を考え遺伝子解析を行った結果,患者と母親にTP53遺伝子の変異が認められた.同症候群は常染色体優性遺伝の形式をとり,非常にまれであり,世界での報告は400家系程度で,TP53遺伝子の関連が報告されている.若年発症の悪性腫瘍では,遺伝性悪性腫瘍の検索を考慮すべきである.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2015.0230