病理標本のアーチファクトの克服(第2報)―スダレ発生のメカニズムとその解消方法の検討

今回我々は標本検鏡時に細胞の核内や細胞質に見られる,細かな波状の切片の割れを伴うアーチファクトを「スダレ」と呼び,その発生し易い状況を検討し,発生機序と解消法を考えた。スダレは膠原線維,細網線維,筋線維などの線維成分が密な部位ではほとんど見られず,凝血塊や腺腫の腺管部分など細胞が密在する部分に多くみられた。スダレを生じ易い薄切条件は,薄切厚が厚い,薄切速度が速い,ブロック温度が低いことであった。スダレ解消にはブロック表面に水分を与え,表面組織を水和することが有効であった。これらよりスダレ発生は,組織ブロック作成時の脱水により,組織・細胞が脆弱化することに加え,線維成分の量や組織内に介在するパラ...

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Published inJapanese Journal of Medical Technology Vol. 64; no. 3; pp. 288 - 294
Main Authors 福井, 義雅, 西川, 武, 田中, 京子, 松尾, 郁, 小関, 久恵, 大林, 千穂, 龍見, 重信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 2015
Japanese Association of Medical Technologists
Subjects
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ISSN0915-8669
2188-5346
DOI10.14932/jamt.14-46

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Summary:今回我々は標本検鏡時に細胞の核内や細胞質に見られる,細かな波状の切片の割れを伴うアーチファクトを「スダレ」と呼び,その発生し易い状況を検討し,発生機序と解消法を考えた。スダレは膠原線維,細網線維,筋線維などの線維成分が密な部位ではほとんど見られず,凝血塊や腺腫の腺管部分など細胞が密在する部分に多くみられた。スダレを生じ易い薄切条件は,薄切厚が厚い,薄切速度が速い,ブロック温度が低いことであった。スダレ解消にはブロック表面に水分を与え,表面組織を水和することが有効であった。これらよりスダレ発生は,組織ブロック作成時の脱水により,組織・細胞が脆弱化することに加え,線維成分の量や組織内に介在するパラフィンの量,さらには薄切手技など複合的な要因で発生すると思われた。
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.14-46