経胸壁心エコー図検査を契機に慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の診断に至った1例

急性肺血栓塞栓症と思われた症例が慢性血栓塞栓性肺高血圧症の急性血栓による増悪であった症例を経験したので報告する. 症例は70歳代女性.入院半年前より倦怠感を自覚,1カ月前より呼吸困難も認めた.20XX年某日,起床時に立位をとったところ,左下肢に違和感が生じ,呼吸困難増悪したため当院救急搬送.来院時の経胸壁心エコー図所見で左室扁平化と肺高血圧を認め,造影CT検査では,両側肺動脈末梢に造影欠損像を認めたため,急性肺血栓塞栓症と診断.入院の上,抗凝固療法を開始した.しかし,入院後の経胸壁心エコー図検査再検にて著明な右室拡大,TR-PG高値を認め,McConnell sign陰性であったことから,慢性...

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Published in心臓 Vol. 49; no. 8; pp. 848 - 853
Main Authors 中村, 俊宏, 三好, 達也, 住本, 恵子, 平沼, 永敏, 佐々木, 義浩, 觀田, 学, 藤井, 隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.08.2017
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Summary:急性肺血栓塞栓症と思われた症例が慢性血栓塞栓性肺高血圧症の急性血栓による増悪であった症例を経験したので報告する. 症例は70歳代女性.入院半年前より倦怠感を自覚,1カ月前より呼吸困難も認めた.20XX年某日,起床時に立位をとったところ,左下肢に違和感が生じ,呼吸困難増悪したため当院救急搬送.来院時の経胸壁心エコー図所見で左室扁平化と肺高血圧を認め,造影CT検査では,両側肺動脈末梢に造影欠損像を認めたため,急性肺血栓塞栓症と診断.入院の上,抗凝固療法を開始した.しかし,入院後の経胸壁心エコー図検査再検にて著明な右室拡大,TR-PG高値を認め,McConnell sign陰性であったことから,慢性肺血栓塞栓症が存在し急性血栓による増悪をきたした可能性が考慮された.治療開始後,徐々に呼吸状態は改善した.抗凝固療法開始2週間後に経胸壁心エコー図検査を行ったところ,左室扁平化の改善,右室の縮小および右室壁運動の軽度改善,左室径拡大を認めた.右心カテーテル検査では,平均肺動脈圧25 mmHgであった.自覚症状は改善し,入院17日目に退院.退院3カ月後の右心カテーテル検査では,平均肺動脈圧28 mmHgと肺高血圧が増悪しており,肺血流シンチにて右肺野の集積欠損像が拡大していたため,慢性血栓塞栓性肺高血圧症と診断し,肺血管拡張薬リオシグアトを開始した.急性期の心エコー図所見が,慢性血栓閉塞性肺高血圧症の診断に役立ったと考えた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.49.848