急性冠症候群を伴った特発性食道破裂の1例

症例は58歳の男性で吐血,心窩部痛を主訴に当院に緊急搬送された.他院で心筋梗塞に対してステント留置後であったため心電図検査を施行し,前胸部誘導でST上昇を認めたため急性冠症候群(acute coronary syndrome;以下,ACSと略記)が疑われた.同時に施行した胸腹部CT所見から特発性食道破裂と診断した.ACSへの治療を優先し冠動脈形成術後,直ちに食道破裂に対する緊急手術を施行した.開胸所見にて胸部下部食道左側壁に5 cm長の食道穿孔を認め,穿孔部縫合閉鎖+横隔膜被覆術,胸腔洗浄ドレナージおよび胃瘻・空腸瘻造設術を施行した.ACSと特発性食道破裂はいずれも胸痛を主訴とするが,本症例は...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 53; no. 7; pp. 558 - 565
Main Authors 小澤, 陽介, 篠﨑, 浩治, 松本, 健司, 鈴村, 博史, 松岡, 義, 井上, 正純, 笹倉, 勇一, 寺内, 寿彰, 木全, 大, 小林, 健二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.07.2020
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Summary:症例は58歳の男性で吐血,心窩部痛を主訴に当院に緊急搬送された.他院で心筋梗塞に対してステント留置後であったため心電図検査を施行し,前胸部誘導でST上昇を認めたため急性冠症候群(acute coronary syndrome;以下,ACSと略記)が疑われた.同時に施行した胸腹部CT所見から特発性食道破裂と診断した.ACSへの治療を優先し冠動脈形成術後,直ちに食道破裂に対する緊急手術を施行した.開胸所見にて胸部下部食道左側壁に5 cm長の食道穿孔を認め,穿孔部縫合閉鎖+横隔膜被覆術,胸腔洗浄ドレナージおよび胃瘻・空腸瘻造設術を施行した.ACSと特発性食道破裂はいずれも胸痛を主訴とするが,本症例は鑑別すべき二つの重篤な疾患が併存していたまれな症例であり,食道破裂が嘔吐を来す疾患に随伴する可能性を考慮し,発症早期の的確な診断と重症度に応じた治療戦略が必要と考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2019.0041