慢性膵炎に合併した膵管胸腔瘻に対して膵頭十二指腸切除術と瘻孔結紮術を施行した1例

症例は47歳の男性で,アルコール性の慢性膵炎の急性増悪とそれに伴う十二指腸狭窄に対して当院内科で保存的加療を行い改善した.その後も禁酒を守れず再増悪に対して入院加療を要し,ERCPでは胆管狭窄も認めるようになった.また,左胸腔には膵管胸腔瘻による膵性胸水の貯留も認めるようになり胸腔ドレーン留置による加療を行った.内視鏡的膵管減圧は困難であり,胆管狭窄と膵性胸水の改善を認めなかったため手術の方針とした.慢性膵炎および胆管狭窄に対しては亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.膵体部の膵管胸腔瘻は肉眼的には同定が困難であったが,主膵管断端から残膵の術中造影と色素の注入を行い瘻孔を同定し瘻孔のみの切除...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 51; no. 3; pp. 214 - 221
Main Authors 杉田, 浩章, 寺田, 卓郎, 俵, 広樹, 奥出, 輝夫, 島田, 雅也, 斎藤, 健一郎, 天谷, 奨, 高嶋, 吉浩, 宗本, 義則, 三井, 毅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2018
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Summary:症例は47歳の男性で,アルコール性の慢性膵炎の急性増悪とそれに伴う十二指腸狭窄に対して当院内科で保存的加療を行い改善した.その後も禁酒を守れず再増悪に対して入院加療を要し,ERCPでは胆管狭窄も認めるようになった.また,左胸腔には膵管胸腔瘻による膵性胸水の貯留も認めるようになり胸腔ドレーン留置による加療を行った.内視鏡的膵管減圧は困難であり,胆管狭窄と膵性胸水の改善を認めなかったため手術の方針とした.慢性膵炎および胆管狭窄に対しては亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.膵体部の膵管胸腔瘻は肉眼的には同定が困難であったが,主膵管断端から残膵の術中造影と色素の注入を行い瘻孔を同定し瘻孔のみの切除が可能であった.慢性膵炎に対する外科治療は根治性と機能温存の両立が重要であるが,本症例では術中造影と色素注入により瘻孔を同定することで瘻孔の切除と残膵の可及的な温存が可能となり有用であった.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2017.0084