経鼻イレウス管による腸重積整復後に腹腔鏡補助下に切除した小腸癌の1例

患者は81歳の女性で,自己免疫性肝炎のフォローのCTで空腸の腸重積を指摘された.腹膜炎症状や腸管壊死を認めず,経鼻イレウス管を挿入し,バルーンを使用して整復した.整復3日後のCTで重積の再発が疑われたため,腹腔鏡補助下手術を施行した.腹腔鏡の鉗子による触診では,重積部近傍に腫瘤を認識できなかった.しかし,小切開創から空腸を創外へ誘導し,手指による触診をしたところ腫瘤を触知したため,小腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査で腫瘤は腺腫内癌と診断された.小腸の腸重積を経鼻イレウス管で整復した報告は過去に認めず,第一に非観血的な整復術を試みることが治療方針の一つになる可能性が示唆された.また,器質...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 50; no. 4; pp. 311 - 316
Main Authors 奥村, 哲, 水村, 直人, 豊田, 翔, 前平, 博充, 今川, 敦夫, 小川, 雅生, 川崎, 誠康, 革島, 洋志, 山本, 堪介, 吉村, 道子, 伊藤, 文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2017
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2016.0111

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Summary:患者は81歳の女性で,自己免疫性肝炎のフォローのCTで空腸の腸重積を指摘された.腹膜炎症状や腸管壊死を認めず,経鼻イレウス管を挿入し,バルーンを使用して整復した.整復3日後のCTで重積の再発が疑われたため,腹腔鏡補助下手術を施行した.腹腔鏡の鉗子による触診では,重積部近傍に腫瘤を認識できなかった.しかし,小切開創から空腸を創外へ誘導し,手指による触診をしたところ腫瘤を触知したため,小腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査で腫瘤は腺腫内癌と診断された.小腸の腸重積を経鼻イレウス管で整復した報告は過去に認めず,第一に非観血的な整復術を試みることが治療方針の一つになる可能性が示唆された.また,器質性病変を伴った腸重積症に対して整復後に腹腔鏡補助下手術を選択することで,根治性や安全性を損なうことなく,低侵襲性および整容性に優れた手術を施行することができると考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2016.0111