直腸癌における神経周囲浸潤の臨床病理学的意義

目的:直腸癌に対する神経周囲浸潤(perineural invasion;以下,PNIと略記)の予後規定因子としての意義を解析した.方法:直腸切除を行った直腸癌412例を検討し,1996~2005年は後ろ向きに2006~2010年は前向きに検討した.結果:144例(35.4%)でPNIが陽性であり,上部直腸癌の陽性率は43.7%,下部直腸癌は24.7%であった.PNI陽性症例の病理組織学的因子の多変量解析ではPNIと上部直腸癌,リンパ管侵襲,脈管侵襲および低分化胞巣間に相関がみられた.PNI陽性の3年生存率と5年生存率はそれぞれ56.2%と37.3%であり,PNI陰性はそれぞれ79.6%と72...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 46; no. 9; pp. 635 - 646
Main Authors 岩本, 一亜, 斎藤, 俊博, 手島, 伸, 武田, 和憲, 鈴木, 博義, 野明, 俊裕, 荒木, 靖三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2013
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:目的:直腸癌に対する神経周囲浸潤(perineural invasion;以下,PNIと略記)の予後規定因子としての意義を解析した.方法:直腸切除を行った直腸癌412例を検討し,1996~2005年は後ろ向きに2006~2010年は前向きに検討した.結果:144例(35.4%)でPNIが陽性であり,上部直腸癌の陽性率は43.7%,下部直腸癌は24.7%であった.PNI陽性症例の病理組織学的因子の多変量解析ではPNIと上部直腸癌,リンパ管侵襲,脈管侵襲および低分化胞巣間に相関がみられた.PNI陽性の3年生存率と5年生存率はそれぞれ56.2%と37.3%であり,PNI陰性はそれぞれ79.6%と72.6%であった.PNIのみられた症例は予後が不良であった(P<0.001).Stage II症例において,PNI陰性の5年生存率が82.7%に対してPNI陽性は44.0%(P=0.008)であり,PNIはN0でも予後因子であることが示された.予後因子では,リンパ節転移,壁深達度,PNIに有意差を認め,リンパ管浸潤や脈管浸潤に有意差は認めなかった.局所再発規定因子として,壁深達度T3/T4とPNIに有意差を認めた.結語:直腸癌のPNIは予後および局所再発の危険因子であり,TNM分類のT因子,N因子を補填する因子としてリンパ管侵襲および脈管侵襲以上に臨床病理学的意義は大きい.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2012.0305