術後早期に薬剤性血小板減少症を発症した上行結腸癌の1例

症例は75歳の女性で,食欲低下・腹痛などを契機に膿瘍形成を伴う上行結腸癌と診断され,2週間の抗菌薬投与後に結腸右半切除術を施行した.術後3日目に急激な血小板減少を認め,その数日後には口腔粘膜出血斑が出現し,ドレーン排液が血性に変化した.縫合不全や敗血症を示唆する症状がなく臨床的に特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura;ITP)を疑いプレドニゾロンの投与を開始したが血小板数は回復せず,消化管出血も認められた.その後,術後15日目から徐々に血小板数が上昇して術後28日目に問題なく退院し,結果的に術前から投与されていたセフメタゾールによる薬剤...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 49; no. 9; pp. 918 - 925
Main Authors 伊藤, 和幸, 中田, 博, 元吉, 誠, 齋藤, 幸夫, 後藤, 振一郎, 趙, 斌
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2016
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2015.0133

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Summary:症例は75歳の女性で,食欲低下・腹痛などを契機に膿瘍形成を伴う上行結腸癌と診断され,2週間の抗菌薬投与後に結腸右半切除術を施行した.術後3日目に急激な血小板減少を認め,その数日後には口腔粘膜出血斑が出現し,ドレーン排液が血性に変化した.縫合不全や敗血症を示唆する症状がなく臨床的に特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura;ITP)を疑いプレドニゾロンの投与を開始したが血小板数は回復せず,消化管出血も認められた.その後,術後15日目から徐々に血小板数が上昇して術後28日目に問題なく退院し,結果的に術前から投与されていたセフメタゾールによる薬剤性血小板減少症と考えられた.術後早期に本症を発症した報告は少ないが,頭蓋内出血など重篤な出血性合併症にも発展しうるため周術期管理においては本疾患も念頭に置くことが大切であると考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2015.0133