盲腸穿孔と壊疽性虫垂炎に対する回盲ヒダ被覆術

回盲ヒダは虫垂間膜と回腸末端下縁との間に生じ,回腸末端下縁から虫垂間膜前面を通り盲腸または虫垂に至る構造物である.これまで,回盲ヒダを外科治療に応用した報告はない.今回,我々は盲腸穿孔と壊疽性虫垂炎に対して回盲ヒダで被覆した2例を経験したため,その手技と有用性を報告する.症例①は盲腸前壁のIsポリープに対してEMRを施行後,翌日に盲腸穿孔による急性汎発性腹膜炎を来し緊急手術を施行した.盲腸前壁に穿孔部を認め,穿孔部を単純閉鎖し回盲ヒダで被覆した.症例②は糞石を伴う壊疽性虫垂炎に対して緊急開腹虫垂切除術を施行した.虫垂は壊死し根部で断裂していた.虫垂根部を楔状切除した後,単純閉鎖し回盲ヒダで被覆...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 54; no. 9; pp. 630 - 636
Main Authors 塩澤, 徹也, 俵藤, 正信, 倉田, 佳彦, 井上, 康浩, 佐藤, 寛丈, 岡田, 真樹, 安田, 是和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.09.2021
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Summary:回盲ヒダは虫垂間膜と回腸末端下縁との間に生じ,回腸末端下縁から虫垂間膜前面を通り盲腸または虫垂に至る構造物である.これまで,回盲ヒダを外科治療に応用した報告はない.今回,我々は盲腸穿孔と壊疽性虫垂炎に対して回盲ヒダで被覆した2例を経験したため,その手技と有用性を報告する.症例①は盲腸前壁のIsポリープに対してEMRを施行後,翌日に盲腸穿孔による急性汎発性腹膜炎を来し緊急手術を施行した.盲腸前壁に穿孔部を認め,穿孔部を単純閉鎖し回盲ヒダで被覆した.症例②は糞石を伴う壊疽性虫垂炎に対して緊急開腹虫垂切除術を施行した.虫垂は壊死し根部で断裂していた.虫垂根部を楔状切除した後,単純閉鎖し回盲ヒダで被覆した.盲腸穿孔での単純閉鎖症例や虫垂根部まで壊死した虫垂炎症例に対し,回盲ヒダ被覆術は有効な選択肢の一つとなりえると考える.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2020.0078