薬剤性皮膚炎と鑑別困難であった大腸癌皮膚転移の1例

症例は49歳の女性で,直腸癌に対して腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.術後CapeOX療法を行ったが,術後8か月に局所再発のため腹会陰式直腸切断術,子宮全摘術を施行した.その後,腹膜播種再発のため3次治療まで施行していた.初回手術から1年10か月後より胸部の紅斑が出現したため皮膚科に紹介したところ薬剤性皮膚炎疑いのためステロイド外用剤の処方で経過観察となった.しかし,その後も改善がなく皮膚科の生検で大腸癌の皮膚転移と診断された.同時期より癌性腹膜炎による疼痛などの症状が強くなり緩和治療に移行した.大腸癌の皮膚転移は0.1~4.4%と比較的まれであるが,病勢の進行した全身転移の1症状として捉えら...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 50; no. 9; pp. 762 - 767
Main Authors 松橋, 延壽, 平田, 伸也, 山口, 和也, 田中, 善宏, 高橋, 孝夫, 今井, 寿, 長田, 真二, 吉田, 和弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2017
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2016.0157

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Summary:症例は49歳の女性で,直腸癌に対して腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.術後CapeOX療法を行ったが,術後8か月に局所再発のため腹会陰式直腸切断術,子宮全摘術を施行した.その後,腹膜播種再発のため3次治療まで施行していた.初回手術から1年10か月後より胸部の紅斑が出現したため皮膚科に紹介したところ薬剤性皮膚炎疑いのためステロイド外用剤の処方で経過観察となった.しかし,その後も改善がなく皮膚科の生検で大腸癌の皮膚転移と診断された.同時期より癌性腹膜炎による疼痛などの症状が強くなり緩和治療に移行した.大腸癌の皮膚転移は0.1~4.4%と比較的まれであるが,病勢の進行した全身転移の1症状として捉えられており,その予後は不良である.大腸癌は化学療法の進歩で延命はできるようになったが,分子標的薬などの皮膚障害も増えており,終末期に多彩な皮膚転移症状を呈することがあることを念頭に置く必要がある.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2016.0157