肝右葉切除術中の門脈左枝の捻転に対して術中門脈ステントを留置した1例

症例は78歳の男性で,健康診断の腹部超音波検査にて肝右葉に腫瘤を指摘され,当院に紹介となった.腹部ダイナミックCTでは,肝右葉に動脈相で濃染する部分を有し,門脈相で低吸収域を呈する8.5 cm大の腫瘤性病変を認め,肝細胞癌と診断した.門脈右枝に対して経皮経肝門脈塞栓術を行った後に,肝右葉切除術を施行した.術中,標本摘出後に超音波検査を施行したところ,残肝の門脈血流が確認されなかった.続けて確認のため術中門脈造影を施行すると,尾状葉のみが造影され門脈左枝以降の血流を認めなかった.肝左葉が右葉のあったスペースへ傾くことによる門脈左枝の捻転による閉塞と診断し,術中に門脈ステント留置を選択,施行した....

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 53; no. 6; pp. 504 - 511
Main Authors 木村, 七菜, 渋谷, 和人, 吉岡, 伊作, 田中, 伸孟, 平野, 勝久, 渡辺, 徹, 馬場, 逸人, 川部, 秀人, 鳴戸, 規人, 奥村, 知之, 長田, 拓哉, 藤井, 努
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.06.2020
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Summary:症例は78歳の男性で,健康診断の腹部超音波検査にて肝右葉に腫瘤を指摘され,当院に紹介となった.腹部ダイナミックCTでは,肝右葉に動脈相で濃染する部分を有し,門脈相で低吸収域を呈する8.5 cm大の腫瘤性病変を認め,肝細胞癌と診断した.門脈右枝に対して経皮経肝門脈塞栓術を行った後に,肝右葉切除術を施行した.術中,標本摘出後に超音波検査を施行したところ,残肝の門脈血流が確認されなかった.続けて確認のため術中門脈造影を施行すると,尾状葉のみが造影され門脈左枝以降の血流を認めなかった.肝左葉が右葉のあったスペースへ傾くことによる門脈左枝の捻転による閉塞と診断し,術中に門脈ステント留置を選択,施行した.ステント留置後は門脈血流の速やかな改善を認めた.術後は抗凝固療法を導入し,第23病日に退院となった.術後13か月経過するが,ステント内血栓は認めず良好な門脈血流を維持している.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2019.0071