抗N-methyl-D-aspartate受容体脳炎を契機に診断された神経内分泌癌成分を伴う胃癌の1例

症例は74歳の男性で,慢性骨髄性白血病で当院に通院中に,易興奮性,不明言動が認められ,抗N-methyl-D-aspartate受容体脳炎(以下,抗NMDAR脳炎と略記)と診断された.ステロイドパルス,免疫グロブリン療法を施行され症状は改善し,その後の全身精査で胃癌の診断を受けた.ESDが施行され,病理診断で神経内分泌癌を伴う腺癌と診断され,またリンパ管侵襲を伴っていたことから,追加切除として腹腔鏡下幽門側胃切除D1+を施行した.抗NMDAR脳炎はNMDARに対する自己抗体により発症する脳炎で腫瘍性病変を併発することが多い疾患であり,積極的な免疫療法に併せて腫瘍切除が再発予防に最も有効であると...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 55; no. 6; pp. 377 - 382
Main Authors 井上, 綾乃, 楢崎, 肇, 中村, 透, 佐藤, 彰記, 中山, 智英, 平野, 聡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.06.2022
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2021.0071

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Summary:症例は74歳の男性で,慢性骨髄性白血病で当院に通院中に,易興奮性,不明言動が認められ,抗N-methyl-D-aspartate受容体脳炎(以下,抗NMDAR脳炎と略記)と診断された.ステロイドパルス,免疫グロブリン療法を施行され症状は改善し,その後の全身精査で胃癌の診断を受けた.ESDが施行され,病理診断で神経内分泌癌を伴う腺癌と診断され,またリンパ管侵襲を伴っていたことから,追加切除として腹腔鏡下幽門側胃切除D1+を施行した.抗NMDAR脳炎はNMDARに対する自己抗体により発症する脳炎で腫瘍性病変を併発することが多い疾患であり,積極的な免疫療法に併せて腫瘍切除が再発予防に最も有効であるとされている.本症を診断した場合,併存する腫瘍性病変の存在を考慮し,慎重な全身検索が必要と考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2021.0071