多発性内分泌腫瘍症1型に合併した45個の膵ガストリノーマの1例

症例は49歳の女性で,多発性内分泌腫瘍症1型(multiple endocrine neoplasia type 1;以下,MEN-1と略記)の診断で経過観察中に,ダイナミックCTで膵臓に複数の多血性腫瘍を指摘された.超音波内視鏡検査で膵鉤部,膵体部,膵尾部に低エコー腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診の結果,神経内分泌腫瘍と診断した.選択的動脈内刺激薬注入試験では,膵臓の栄養血管の全てにおいて血清ガストリン値の上昇を認めた.多発膵ガストリノーマと診断し,膵全摘術+D2郭清を施行した.病理学的に数えうるかぎり45個の微小病変を膵全体に認め,リンパ節転移を伴っていた.45個の膵神経内分泌腫瘍は既報告の中で...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 54; no. 9; pp. 622 - 629
Main Authors 船水, 尚武, 田村, 圭, 高井, 昭洋, 北澤, 理子, 坂元, 克考, 北澤, 荘平, 永岡, 智之, 西, 悠介, 高田, 泰次, 岩田, みく, 小川, 晃平, 松井, 貴司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.09.2021
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2020.0122

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Summary:症例は49歳の女性で,多発性内分泌腫瘍症1型(multiple endocrine neoplasia type 1;以下,MEN-1と略記)の診断で経過観察中に,ダイナミックCTで膵臓に複数の多血性腫瘍を指摘された.超音波内視鏡検査で膵鉤部,膵体部,膵尾部に低エコー腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診の結果,神経内分泌腫瘍と診断した.選択的動脈内刺激薬注入試験では,膵臓の栄養血管の全てにおいて血清ガストリン値の上昇を認めた.多発膵ガストリノーマと診断し,膵全摘術+D2郭清を施行した.病理学的に数えうるかぎり45個の微小病変を膵全体に認め,リンパ節転移を伴っていた.45個の膵神経内分泌腫瘍は既報告の中で,最多個数であった.術後1年9か月経過しており,無再発生存中である.MEN-1に伴うガストリノーマは,散発性と比較して悪性度が高く,微小病変が多発する特性を持つことを考慮し,適切な術式選択を行う必要がある.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2020.0122