門脈腫瘍塞栓・同時性肝転移を伴う胃癌に対する化学療法と肉眼的根治切除により12年生存をえている1例

症例は58歳の女性で,2002年2月に門脈腫瘍塞栓と同時性単発性肝転移を伴う胃癌を診断され,化学療法を開始した.S-1/CDDP療法により肝転移巣は縮小し,門脈腫瘍塞栓は画像検査上消失した.副作用のため化学療法の継続は困難となり,2002年6月に胃全摘(D2郭清),脾摘および肝部分切除術を施行した.胃癌取扱い規約第13版による病理組織学的診断は,粘液癌,pT2(SS),pN0,pH1,pStage IV,組織学的効果判定はGrade 2であった.術後補助化学療法は副作用のため途中で中止したが,術後12年無再発生存中である.門脈腫瘍塞栓を伴う胃癌は肝転移やリンパ節転移を伴うことが多く予後不良とさ...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 48; no. 4; pp. 297 - 305
Main Authors 西野, 裕人, 佐々木, 勉, 浅生, 義人, 古山, 裕章, 吉村, 玄浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2015
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Summary:症例は58歳の女性で,2002年2月に門脈腫瘍塞栓と同時性単発性肝転移を伴う胃癌を診断され,化学療法を開始した.S-1/CDDP療法により肝転移巣は縮小し,門脈腫瘍塞栓は画像検査上消失した.副作用のため化学療法の継続は困難となり,2002年6月に胃全摘(D2郭清),脾摘および肝部分切除術を施行した.胃癌取扱い規約第13版による病理組織学的診断は,粘液癌,pT2(SS),pN0,pH1,pStage IV,組織学的効果判定はGrade 2であった.術後補助化学療法は副作用のため途中で中止したが,術後12年無再発生存中である.門脈腫瘍塞栓を伴う胃癌は肝転移やリンパ節転移を伴うことが多く予後不良とされ,根治切除の報告はまれである.とりわけ本症例のように,同時性肝転移を有した症例に対して化学療法後に肝切除を含む根治手術を施行し,長期に無再発で経過している症例の報告はみられず,極めてまれである.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2014.0065