正常妊娠における個人血圧値推移パターンの検討

妊娠中の健康管理において, 血圧値変動の観察が妊娠中毒症および高血圧症等の循環器疾患のチェックに有意義であるにもかかわらず, 平均血圧値によって評価されていた.本研究は, 妊娠時期を通じて縦断的に得られた血圧値をもとに, 初めて, 正常妊娠における個人の血圧値推移パターンを検討したものである.また, 個人属性と血圧値との関連の検討, 妊娠末期の平均血圧値と出生体重の関連の検討もあわせて行った.調査方法は, 神奈川県内のY産婦人科クリニックにおいて昭和61年内に出産した妊婦のうち, 妊娠経過, 既往歴, 家族歴等を考慮し, 正常妊婦とみなせる355人を調査対象とした.血圧値は, 妊娠第5月から第...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 48; no. 4; pp. 507 - 513
Main Authors 吉田, 洋一, 猫田, 泰敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 1988
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ISSN0037-4342
2185-0976
DOI10.14930/jsma1939.48.507

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Summary:妊娠中の健康管理において, 血圧値変動の観察が妊娠中毒症および高血圧症等の循環器疾患のチェックに有意義であるにもかかわらず, 平均血圧値によって評価されていた.本研究は, 妊娠時期を通じて縦断的に得られた血圧値をもとに, 初めて, 正常妊娠における個人の血圧値推移パターンを検討したものである.また, 個人属性と血圧値との関連の検討, 妊娠末期の平均血圧値と出生体重の関連の検討もあわせて行った.調査方法は, 神奈川県内のY産婦人科クリニックにおいて昭和61年内に出産した妊婦のうち, 妊娠経過, 既往歴, 家族歴等を考慮し, 正常妊婦とみなせる355人を調査対象とした.血圧値は, 妊娠第5月から第10月において, 妊婦健診の際に, 日本循環器管理研究協議会の定める方法に準じて, 同一医師により測定されたものを用いた.身長, 体重は初診時の値を用いた.個人血圧値推移パターンの検討においては, 林の考案した測定値変動を含むデータの相関分析に関するモデルを用いた.1) 従来用いられている妊娠時期ごとの平均血圧値と個人別の血圧値との関係を検討した結果は, 正常妊娠においては妊娠時期ごとの個人の血圧値水準にかかわりなく, 妊娠経過に伴う個人別の血圧値は, 平均血圧値と類似の推移パターンを示すことがわかった.2) しかし, 個人の血圧値の変動を第5月から第10月までの間について検討した結果, 妊娠時期ごとにおいて若干の差は認められるが, 平均して, 収縮期血圧値では平均血圧値の±25mmHgに対し±17mmHg, 拡張期血圧値では平均血圧値の±20mmHgに対し±15mmHg程度の狭い幅を正常範囲として考慮すべきであることを明らかにした.すなわち, 収縮期血圧値, 拡張期血圧値の正常範囲をそれぞれ±8mmHg, ±5mmHg程度縮小すべきであろう.3) 個人属性と血圧値との検討の結果, 収縮期血圧値は, 身長・体重と正の相関, 拡張期血圧値は, 年齢・体重と正の相関がそれぞれ認められた.出産歴は血圧値にほとんど影響しないことも示された.4) 妊娠末期の個人の平均血圧値と出生体重には有意な関連は認められなかった.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma1939.48.507