鼠径ヘルニア症状を来さず偽還納による腸閉塞で発症し腹腔鏡下に診断および解除した1例

症例は86歳の男性で,左鼠径部膨隆や疼痛の既往はなかった.嘔吐が6日間続き前医を受診し,腸閉塞の診断でイレウス管を挿入され,2日後に当院へ転院搬送された.当院での腹部造影CTで,鼠径部近傍の内ヘルニアによる腸閉塞と診断した.腸管減圧はされており,同日に審査腹腔鏡を施行した.左下腹壁動静脈外側で囊状の腹膜に小腸が陥頓し,口側小腸の拡張を認めたため左鼠径ヘルニア偽還納による腸閉塞と診断し,鏡視下で嵌頓を解除した.前立腺癌根治術後のため,鼠径部切開法により直視下に腸管色調の観察とヘルニア根治術を行った.腸管切除を想定していたが,腸管の色調が回復したため腸管切除は行わずリヒテンシュタイン法を施行した....

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 57; no. 8; pp. 401 - 409
Main Authors 竹元, 小乃美, 浜田, 卓巳, 横田, 良一, 篠原, 翔平, 島田, 慎吾, 山田, 健司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.08.2024
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2023.0052

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Summary:症例は86歳の男性で,左鼠径部膨隆や疼痛の既往はなかった.嘔吐が6日間続き前医を受診し,腸閉塞の診断でイレウス管を挿入され,2日後に当院へ転院搬送された.当院での腹部造影CTで,鼠径部近傍の内ヘルニアによる腸閉塞と診断した.腸管減圧はされており,同日に審査腹腔鏡を施行した.左下腹壁動静脈外側で囊状の腹膜に小腸が陥頓し,口側小腸の拡張を認めたため左鼠径ヘルニア偽還納による腸閉塞と診断し,鏡視下で嵌頓を解除した.前立腺癌根治術後のため,鼠径部切開法により直視下に腸管色調の観察とヘルニア根治術を行った.腸管切除を想定していたが,腸管の色調が回復したため腸管切除は行わずリヒテンシュタイン法を施行した.術後は第12病日に退院した.鼠径部膨隆・疼痛などのエピソードや還納歴がなく,腸閉塞で発症した左鼠径ヘルニア偽還納の症例を経験した.内ヘルニアおよび偽還納の診断と解除には腹腔鏡での観察は有用であった.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2023.0052