高齢で自己注射困難なインスリノーマ患者にオクトレオチドLARを投与し低血糖をコントロールし得た1例

症例は80歳の女性.低血糖を主訴に紹介となり,精査の結果からインスリノーマの診断となった.御本人・御家族が外科的治療を拒否したため,補食,あるいはオクトレオチドによる内科的治療を検討した.オクトレオチドは膵臓のインスリン分泌を抑制するが,その効果は一定ではないため,明確な投与基準は存在しない.そこで,本症例では持続皮下血糖測定器(以下CGMと略す)を用いてオクトレオチドの効果を確認した.解析結果より,午後11時に100 cal程度の補食をした場合,あるいは眠前にオクトレオチドを投与した場合に夜間の低血糖を防止することができた.しかし患者本人は,高齢であり軽度の麻痺があるために自己注射は困難であ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 54; no. 2; pp. 172 - 178
Main Authors 神野, 文香, 井出, 佳奈, 栗田, 健市, 寺野, 隆, 山本, 恭平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.04.2017
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は80歳の女性.低血糖を主訴に紹介となり,精査の結果からインスリノーマの診断となった.御本人・御家族が外科的治療を拒否したため,補食,あるいはオクトレオチドによる内科的治療を検討した.オクトレオチドは膵臓のインスリン分泌を抑制するが,その効果は一定ではないため,明確な投与基準は存在しない.そこで,本症例では持続皮下血糖測定器(以下CGMと略す)を用いてオクトレオチドの効果を確認した.解析結果より,午後11時に100 cal程度の補食をした場合,あるいは眠前にオクトレオチドを投与した場合に夜間の低血糖を防止することができた.しかし患者本人は,高齢であり軽度の麻痺があるために自己注射は困難であった.そこで補食による低血糖予防を選択し退院となった.しかし,就寝時間に制限のある生活に疲労がみられたため,病院で注射が可能なオクトレオチドLAR10 mgを投与し,効果をCGMにて確認したところ,低血糖予防に有用であった.来院時に月1回オクトレオチドLARを投与し低血糖を予防したところ,患者の生活制限も軽減しQOLの向上が見られた.高齢インスリノーマ患者で,オクトレオチドLARにより低血糖の予防を試み,患者のQOLを向上させることができた症例を経験したので報告する.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.54.172