ダブルバルーン小腸内視鏡で診断し切除しえた回腸静脈瘤出血の1例

症例は49歳の女性で,B型慢性肝炎を背景とした肝細胞癌に対して7年前から肝切除,TAE,ラジオ波焼灼療法を受けており,経過中に食道静脈瘤に対する内視鏡的治療が行われていた.また,子宮全摘術の既往があった.今回,下血と嘔吐を主訴に来院した.経肛門的ダブルバルーン小腸内視鏡にて回腸静脈瘤出血と診断された.ヨードアレルギーのため造影CTや血管造影を行うことができなかった.開腹手術にて静脈瘤を含む回腸の部分切除を行い,以後出血を認めていない.回腸静脈瘤はまれな疾患であるが,発症の危険因子として腹部手術の既往や食道静脈瘤の治療既往などがあり,診断に際して有用である.また,近年,小腸内視鏡やカプセル内視鏡...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 49; no. 2; pp. 131 - 138
Main Authors 那須, 克宏, 古西, 崇寛, 小田, 竜也, 原, 明弘, 野口, 雅之, 大河内, 信弘, 福永, 潔, 高野, 恵輔, 橋本, 真治, 菅野, 雅人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2016
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2015.0018

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Summary:症例は49歳の女性で,B型慢性肝炎を背景とした肝細胞癌に対して7年前から肝切除,TAE,ラジオ波焼灼療法を受けており,経過中に食道静脈瘤に対する内視鏡的治療が行われていた.また,子宮全摘術の既往があった.今回,下血と嘔吐を主訴に来院した.経肛門的ダブルバルーン小腸内視鏡にて回腸静脈瘤出血と診断された.ヨードアレルギーのため造影CTや血管造影を行うことができなかった.開腹手術にて静脈瘤を含む回腸の部分切除を行い,以後出血を認めていない.回腸静脈瘤はまれな疾患であるが,発症の危険因子として腹部手術の既往や食道静脈瘤の治療既往などがあり,診断に際して有用である.また,近年,小腸内視鏡やカプセル内視鏡が用いられるようになり,これまで行われていたCTや血管造影検査を上回る診断能を有する.治療については手術が確実であり,安全な手術のためには回腸静脈瘤の血行動態を念頭に置くことが重要である.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2015.0018