初発・再発時ともに急性膵炎をじゃっ起した破骨細胞様巨細胞型退形成癌の1例

症例は73歳の女性で,腹痛・嘔吐を主訴に2012年9月当院を受診した.膵酵素の上昇,膵尾部の腫大・毛羽立ち像とその中枢側に14 mm大の腫瘤を認め,腫瘍随伴性急性膵炎と診断した.擦過細胞診で低分化腺癌を認め,膵体尾部切除を施行した.出血を伴う充実性腫瘍で,膵管癌の成分とともに反応性の多核巨細胞を交えた膵退形成癌(破骨細胞様巨細胞型)であった.2014年5月,残膵に占居性病変が出現したものの,再発の診断には至らず,慎重に観察していた.2014年11月,膵酵素の上昇を伴う腹痛を自覚した.残膵の腫瘤は増大,擦過細胞診で多核化した腫瘍細胞を認めた.残膵再発と診断し,2014年12月,残膵全摘を施行した...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 49; no. 3; pp. 225 - 233
Main Authors 岩垣, 博巳, 稲垣, 優, 園部, 宏, 梶岡, 裕紀, 徳永, 尚之, 北田, 浩二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2016
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2015.0061

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Summary:症例は73歳の女性で,腹痛・嘔吐を主訴に2012年9月当院を受診した.膵酵素の上昇,膵尾部の腫大・毛羽立ち像とその中枢側に14 mm大の腫瘤を認め,腫瘍随伴性急性膵炎と診断した.擦過細胞診で低分化腺癌を認め,膵体尾部切除を施行した.出血を伴う充実性腫瘍で,膵管癌の成分とともに反応性の多核巨細胞を交えた膵退形成癌(破骨細胞様巨細胞型)であった.2014年5月,残膵に占居性病変が出現したものの,再発の診断には至らず,慎重に観察していた.2014年11月,膵酵素の上昇を伴う腹痛を自覚した.残膵の腫瘤は増大,擦過細胞診で多核化した腫瘍細胞を認めた.残膵再発と診断し,2014年12月,残膵全摘を施行した.病理組織学的にも退形成癌の再発であることが示された.急性膵炎をじゃっ起する膵癌は多くはない.さらに,退形成癌は比較的まれで,かつ予後不良とされており,初回手術後に再発巣の再切除が可能であった例は極めてまれである.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2015.0061