ビタミンE及びA投与によるラット口蓋上皮細胞分裂活性に関する基礎的研究

口蓋裂の発生予防を目的とした実験的研究は数多く報告されてきたが, 近年になり口蓋裂の発生機序として“apoptosis=programmed cell death”や“epithelial mesenchymal transformation”が注目されるようになった.今回我々はビタミンEのビタミンA誘発口蓋裂に対する抑制効果に注目し, ビタミンA過剰投与誘発口蓋裂・ビタミンE予防投与誘発口蓋裂・無処置のラット3群をもうけ, 披裂部DNA活性細胞の相異について観察し比較検討した.実験はウィスター系ラット確定妊娠7・8日目にビタミンE (VE) を12.5mg/体重100g・更に確定妊娠9・10...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 60; no. 3; pp. 407 - 412
Main Authors 藤巻, 史子, 塚越, 卓, 大久保, 文雄, 保阪, 善昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 28.06.2000
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Summary:口蓋裂の発生予防を目的とした実験的研究は数多く報告されてきたが, 近年になり口蓋裂の発生機序として“apoptosis=programmed cell death”や“epithelial mesenchymal transformation”が注目されるようになった.今回我々はビタミンEのビタミンA誘発口蓋裂に対する抑制効果に注目し, ビタミンA過剰投与誘発口蓋裂・ビタミンE予防投与誘発口蓋裂・無処置のラット3群をもうけ, 披裂部DNA活性細胞の相異について観察し比較検討した.実験はウィスター系ラット確定妊娠7・8日目にビタミンE (VE) を12.5mg/体重100g・更に確定妊娠9・10・11日目にビタミンA (VA) 10000単位/体重100gを腹腔内投与したVE群30匹, 同様にVAだけ投与したVA群30匹, 無処置 (C) 群25匹を準備し, 確定妊娠20日目にBrdU 25mg/体重kgを腹腔内投与し, 3時間後に断頭.ホルマリン固定後免疫組織学染色して得た胎仔1023体より, 無作為に選んだ65体について顕微鏡下にDNA活性細胞を観察した.本実験による口蓋裂発生率はVE群で47.0%・VA群で73.5%・C群で0%となり, VEのVAによる誘発口蓋裂発現抑制率は64.0%であった.また, 各群でのDNA活性細胞陽性率の平均値は, 順に16.0‰・85.6‰・7.7‰であった.抗酸化剤として知られるVEは単独大量投与及び欠乏にて催奇性を認めるものの, 少量の投与では副作用を認めないとされている.このことから, 今回の実験において, VEはVAの酸化物であるレチノイン酸 (RA) の生成を阻害することで口蓋裂の発現抑制をしたものと考えられる.また, 各群におけるCP (+) 群で両側口蓋突起の正中方向への発育不全を認め, DNA活性細胞陽性率はVA群で著明に高値となった.このことは, その機序の解明には至っていないが, RAが神経堤細胞表面の接着分子を消失させ, 神経細胞の目的地への移動を可能にする反面, 到達先での接着分子の再現を抑制して細胞接着を阻止するため, 細胞の分化増殖抑制が生じ, 更にRAが細胞分裂G2期に作用して分裂周期を延長させるため細胞増殖は抑制されるという渡辺の説を裏付ける結果となった.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma1939.60.407