急性膵炎を契機に発見され幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した早期十二指腸乳頭部癌の1例

症例は59歳の男性で,急性膵炎の原因精査にて十二指腸乳頭部腫瘍を認めた.内視鏡下生検では腺腫の診断であった.腺腫内癌の合併頻度が高いこと,現在の画像診断の精度では良悪の鑑別や進展度の評価が困難であることから,膵炎の保存的加療後に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査では粘膜内に腺癌成分を認め,共通管および膵管内腔を占居するように腫瘍が増殖し膵液流出障害を来したことが推察された.最終診断は早期乳頭部癌,非露出腫瘤型,15×15 mm,H0,pPanc0,pDu0,P0,pN0,M(–),St(+),pT1(m),Stage Iであった.十二指腸乳頭部腫瘍は黄疸などで発症すること...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 49; no. 4; pp. 276 - 284
Main Authors 高田, 智司, 中野, 達夫, 尾島, 英介, 道輪, 良男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2016
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Summary:症例は59歳の男性で,急性膵炎の原因精査にて十二指腸乳頭部腫瘍を認めた.内視鏡下生検では腺腫の診断であった.腺腫内癌の合併頻度が高いこと,現在の画像診断の精度では良悪の鑑別や進展度の評価が困難であることから,膵炎の保存的加療後に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査では粘膜内に腺癌成分を認め,共通管および膵管内腔を占居するように腫瘍が増殖し膵液流出障害を来したことが推察された.最終診断は早期乳頭部癌,非露出腫瘤型,15×15 mm,H0,pPanc0,pDu0,P0,pN0,M(–),St(+),pT1(m),Stage Iであった.十二指腸乳頭部腫瘍は黄疸などで発症することが多く,膵炎を伴う症例はまれである.急性膵炎を合併した十二指腸乳頭部腫瘍の本邦報告例をまとめ,本症例とあわせて考察を行った.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2015.0067