非経穴部刺激鎮痛発現経路を抑制する鎮痛抑制系の抑制部位

経穴を刺激して現われる針麻酔の鎮痛 (AA) と鎮痛抑制系を破壊して現われる非経穴部の刺激による鎮痛 (NAA) とは中枢経路を異にし, 中脳中心灰白質 (PAG) でも背側部と外側部とにわかれた部位を通過する.鎮痛抑制系の抑制はNAAのみに加わっているので, PAGの背側部と外側部の刺激によって現われる鎮痛に対する鎮痛抑制系の視床正中中心核外側部 (ICM) の破壊, 刺激効果及び経穴部非経穴部の刺激でPAGの外側部に現われる誘発電位に対するICMの刺激の効果などから, 抑制系からの抑制が加わっている部位の同定を実験的に検討した.痛みの閾値はラットの尾逃避反応の潜伏期とした.中脳中心灰白質背...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 43; no. 5; pp. 609 - 613
Main Authors 羅, 昌平, 菱田, 不美, 楠本, 盛一, 武重, 千冬
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 1983
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Summary:経穴を刺激して現われる針麻酔の鎮痛 (AA) と鎮痛抑制系を破壊して現われる非経穴部の刺激による鎮痛 (NAA) とは中枢経路を異にし, 中脳中心灰白質 (PAG) でも背側部と外側部とにわかれた部位を通過する.鎮痛抑制系の抑制はNAAのみに加わっているので, PAGの背側部と外側部の刺激によって現われる鎮痛に対する鎮痛抑制系の視床正中中心核外側部 (ICM) の破壊, 刺激効果及び経穴部非経穴部の刺激でPAGの外側部に現われる誘発電位に対するICMの刺激の効果などから, 抑制系からの抑制が加わっている部位の同定を実験的に検討した.痛みの閾値はラットの尾逃避反応の潜伏期とした.中脳中心灰白質背側部 (dPAG) , 外側部 (IPAG) , ICMの電気刺激には600msecの間に漸増する80Hzの2相性波を用い, この刺激を毎秒1回の頻度で与えた.定電流装置によって, PAG刺激の最高値は50μAとし, ICM刺激のそれは200μAとした・経穴部, 非経穴部の刺激でIPAGに現われる誘発電位は30回加算して記録した.電極の挿入位置の確認は脳の冷凍切片によった.ICMを破壊するとdPAG及びIPAGの刺激によって現われる鎮痛 (dPAG-SPA, IPAG-SPA) のうち, dPAG-SPAには変化は現われなかったが, IPAG-SPAは有意の差 (P<0.05) をもって増大した.ICMに刺激を加えるとdPAG-SPAには何の変化も現われなかったが, IPAG-SPAはICMの刺激期間中完全に抑制された.経穴部及び非経穴部の刺激でIPAGに現われた誘発電位はICMの刺激によって21例中13例は完全に抑制され, 4例は不完全に抑制され, 4例には変化は現われなかった.ICMの破壊や刺激の影響をうけたIPAG-SPAを発現したIPAGの刺激部位と, ICMの刺激で抑制されたIPAGの誘発電位の記録部位とは, 脳の組織切片の検索でほぼ同一部位にあったので, ICMからNAA発現系に対する抑制部位はIPAGにあることが結論された.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma1939.43.609