純粋型自律神経不全症の下痢,腹痛,尿閉,起立性低血圧に桂枝加芍薬湯が奏効した一例

純粋型自律神経不全症(PAF)は多彩な自律神経症状を伴う変性疾患の中で,体性神経症状を伴わない疾患である。今回我々はPAFに対して桂枝加芍薬湯が奏効した症例を経験した。症例は下痢,腹痛,排尿障害,起立性低血圧を主訴とする61歳,男性である。安静時の血漿ノルアドレナリンが低値で,123I MIBG心筋シンチグラフィーで高度びまん性交感神経機能障害が示唆され,PAFが強く疑われた。種々の漢方薬を投与したが,無効ないし継続困難であった。尿閉に対しては自己導尿を行った。桂枝加芍薬湯エキスの投与により,下痢や腹痛の頻度が減少し,食事も摂れるようになっていった。次第に活動範囲も広がり,自尿も得られたため導...

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Published in日本東洋医学雑誌 Vol. 62; no. 6; pp. 736 - 743
Main Authors 引網, 宏彰, 藤本, 誠, 中田, 真司, 山本, 佳乃子, 嶋田, 豊, 野上, 達也, 後藤, 博三, 柴原, 直利
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本東洋医学会 2011
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ISSN0287-4857
1882-756X
DOI10.3937/kampomed.62.736

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Summary:純粋型自律神経不全症(PAF)は多彩な自律神経症状を伴う変性疾患の中で,体性神経症状を伴わない疾患である。今回我々はPAFに対して桂枝加芍薬湯が奏効した症例を経験した。症例は下痢,腹痛,排尿障害,起立性低血圧を主訴とする61歳,男性である。安静時の血漿ノルアドレナリンが低値で,123I MIBG心筋シンチグラフィーで高度びまん性交感神経機能障害が示唆され,PAFが強く疑われた。種々の漢方薬を投与したが,無効ないし継続困難であった。尿閉に対しては自己導尿を行った。桂枝加芍薬湯エキスの投与により,下痢や腹痛の頻度が減少し,食事も摂れるようになっていった。次第に活動範囲も広がり,自尿も得られたため導尿を中止できた。5年後に自律神経機能の低下を認め,臨床的にPAFと診断したが,日常生活の活動性は低下していなかった。本症例のような多彩な自律神経症状を呈する疾患に対して,桂枝加芍薬湯は有用な治療手段となり得る可能性が示唆された。
ISSN:0287-4857
1882-756X
DOI:10.3937/kampomed.62.736