下肢義足における裸足と靴ばき歩行可能なFore Joint Footの有効性について
下肢切断患者における和式生活では, 屋内と屋外で靴の脱着を要する習慣のため, 靴を脱ぐと義足長の変化と共に, アライメントの異常から踵部が浮く尖足位となり, 膝の不安定性を生じるなどが大きな問題であった.そこで, 靴を脱いでも, 靴を履いても義足長の変化に適応でき, 歩行時の義足のバランスと膝の安定化を向上させる, 独自のF J footを開発使用してきた.F J footの特徴は足継手を従来の位置からより前方にずらすと共に, 従来の継手位置に上下二つのゴム製バンパーを挿入したものである.今回, 下肢切断者に対して, 本F J footと従来のconventional foot, SACH f...
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Published in | 昭和医学会雑誌 Vol. 57; no. 3; pp. 209 - 217 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
昭和大学学士会
28.06.1997
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Subjects | |
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ISSN | 0037-4342 2185-0976 |
DOI | 10.14930/jsma1939.57.209 |
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Summary: | 下肢切断患者における和式生活では, 屋内と屋外で靴の脱着を要する習慣のため, 靴を脱ぐと義足長の変化と共に, アライメントの異常から踵部が浮く尖足位となり, 膝の不安定性を生じるなどが大きな問題であった.そこで, 靴を脱いでも, 靴を履いても義足長の変化に適応でき, 歩行時の義足のバランスと膝の安定化を向上させる, 独自のF J footを開発使用してきた.F J footの特徴は足継手を従来の位置からより前方にずらすと共に, 従来の継手位置に上下二つのゴム製バンパーを挿入したものである.今回, 下肢切断者に対して, 本F J footと従来のconventional foot, SACH footの3種類を裸足と靴ばき歩行において比較検討すると共に, 健常成人との対比からF J footの有効性を歩行周期と歩行時足底圧の動態より検証したので報告する.1) .対象は, 現在までF J footを使用した下肢切断者40症例である.性別は男性22例, 女性18例である.健常成人は男性10例とした.2) .解析方法は平地歩行時の歩行周期における各相の比率を加速度計を応用したphase meterで測定した.足底圧パターンはpressure gaugeを義足足部の踵中央部, 第一中足骨骨頭部, 第5中足骨骨頭部に相当する足底部に装着し, 圧力分布を解析した.3) .結果は (1) 歩行周期解析では, 靴ばきと裸足で比較するとconventional foot及びSACH footが, 靴ばきでは健常成人に近い割合を示したが, 裸足では, 全足底接地と立脚中期の割合が極端に減少し, 蹴りだし期が異常に増加する大きな違いを認めた.即ち, 靴ばきと裸足での変化が異常に強く現れている.しかし, F J footではこれに比し, 靴ばきと裸足の変化が有意に少なく (P<0.05) , 健常成人同様のパターンに近いことが明確に認められた. (2) 足底圧パターンでは, conventional foot, SACH footが第1中足骨骨頭部, 第5中足骨骨頭部での圧力値の立ち上がりが著しく遅れ, 特にconventional footでは靴ばき時に第5中足骨骨頭部に圧力が作用していたにも関わらず, 裸足の状態になると圧力は全く検出されず, 靴ばきと裸足での著しい変化を認めた.これに比較し, F J footでの靴ばきと裸足における変化は有意に少なく (P<0.05) , 圧力の立ち上がりや圧力分布から見て, より健常成人に近い結果が得られた.これらの結果より, F J footは裸足と靴ばき歩行の両立に極めて有効で, 和式生活での生活活動向上に十分寄与できたものと考える. |
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ISSN: | 0037-4342 2185-0976 |
DOI: | 10.14930/jsma1939.57.209 |