胃切除後食物停滞による残胃拡張に対する簡易な治療介入インデックスの同定

目的:胃切除後食物停滞による残胃拡張は誤嚥性肺炎や入院期間延長のリスクとなるが,残胃拡張を定義する明確な指標は存在しない.本研究では,胃切除後の腹部単純レントゲン(以下,X-pと略記)検査で得られる指標を用いて,胃拡張に対する治療介入と関連した臨床指数を同定することを目的とした.方法:2019年1月から8月の間に北里大学病院で施行された幽門側胃切除術を施行した95例中,術後に立位にて腹部単純X-p検査を行った77例を対象とした.観察しうる胃泡の最大幅,横隔膜下縁から胃泡の上縁までの距離(胃壁の厚さ),胃の縦径を計測し,椎体の中心から左横隔膜角までの距離で補正した.計測値と治療介入の有無との関係...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 56; no. 3; pp. 137 - 145
Main Authors 渡部, 晃子, 牛久, 秀樹, 櫻谷, 美貴子, 中馬, 基博, 山下, 継史, 比企, 直樹, 新原, 正大, 細田, 桂, 原田, 宏輝, 鷲尾, 真理愛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.03.2023
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2021.0157

Cover

Loading…
More Information
Summary:目的:胃切除後食物停滞による残胃拡張は誤嚥性肺炎や入院期間延長のリスクとなるが,残胃拡張を定義する明確な指標は存在しない.本研究では,胃切除後の腹部単純レントゲン(以下,X-pと略記)検査で得られる指標を用いて,胃拡張に対する治療介入と関連した臨床指数を同定することを目的とした.方法:2019年1月から8月の間に北里大学病院で施行された幽門側胃切除術を施行した95例中,術後に立位にて腹部単純X-p検査を行った77例を対象とした.観察しうる胃泡の最大幅,横隔膜下縁から胃泡の上縁までの距離(胃壁の厚さ),胃の縦径を計測し,椎体の中心から左横隔膜角までの距離で補正した.計測値と治療介入の有無との関係をROC曲線にて解析した.結果:77例のうち治療介入を必要とした症例は5例で,最も強く関連が示唆された臨床指数は椎体の中心から左横隔膜角までの距離と胃泡の最大幅の比であった(胃拡張インデックスと定義).この指標が,治療介入を予測する至適カットオフ値は51.0%と算出され,治療介入を予測する感度は100%,特異度は86%,AUCは0.94であった.結語:腹部単純X-p検査における胃拡張指数は,胃切除後の胃拡張に対する治療介入を予測する有用な指標となる可能性がある.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2021.0157