肝膿瘍消退部位に発見された肝細胞癌の1例

症例は75歳の男性で,2004年2月,肝外側区域および後区域のKlebsiella pneumoniaeによる肝膿瘍の敗血症性ショックで他院に入院した.抗生剤投与により膿瘍は縮小し,全身状態は改善した.10か月後に膿瘍は消失し,経過観察中止となった.2007年1月の検診にて肝胆道系酵素上昇を指摘され,腹部超音波検査,CTで以前の肝膿瘍存在部位に一致する肝外側区域に6 cm大の腫瘍を認めた.肝炎ウイルス検査は陰性であったが,血清AFP値は上昇していた.厚い不整な被膜の内部に隔壁を有する画像検査所見より,混合型肝癌と診断して肝左葉切除術を施行した.病理組織学的検査では多結節癒合型の肝細胞癌で,腫瘍...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 46; no. 2; pp. 91 - 97
Main Authors 稲葉, 圭介, 鈴木, 淳司, 坂口, 孝宣, 福本, 和彦, 大石, 康介, 今野, 弘之, 馬場, 聡, 森田, 剛文, 鈴木, 昌八
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2013
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2011.0319

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Summary:症例は75歳の男性で,2004年2月,肝外側区域および後区域のKlebsiella pneumoniaeによる肝膿瘍の敗血症性ショックで他院に入院した.抗生剤投与により膿瘍は縮小し,全身状態は改善した.10か月後に膿瘍は消失し,経過観察中止となった.2007年1月の検診にて肝胆道系酵素上昇を指摘され,腹部超音波検査,CTで以前の肝膿瘍存在部位に一致する肝外側区域に6 cm大の腫瘍を認めた.肝炎ウイルス検査は陰性であったが,血清AFP値は上昇していた.厚い不整な被膜の内部に隔壁を有する画像検査所見より,混合型肝癌と診断して肝左葉切除術を施行した.病理組織学的検査では多結節癒合型の肝細胞癌で,腫瘍辺縁部に肉芽細胞や異物巨細胞を含む炎症性瘢痕組織がみられ,以前膿瘍が存在した部位に肝細胞癌が顕在化したものと考えられた.発生原因が不明な肝膿瘍では治癒後も定期的な経過観察が重要である.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2011.0319