胆管内進展を伴った肝癌肉腫の1切除例

症例は82歳の男性で,近医で肝機能障害を指摘され当院紹介となった.肝炎ウィルスは陰性でアルコール多飲歴はなかった.腹部造影CTで肝門板の左頭側に造影効果の低い35 mmの腫瘤影と左肝内胆管の拡張を認め,左肝動脈,門脈左枝への浸潤を認めた.胆道造影CTで右肝管本幹から上部肝管にかけて狭窄を認め,左葉の肝内胆管は全く造影されなかった.左肝管からの胆管内進展を伴う肝門部胆管癌の術前診断で拡大肝左葉切除,肝外胆管切除,リンパ節郭清を施行した.病理組織学的所見では腫瘍の大半は横紋筋芽細胞からなり一部横紋筋へと分化し,辺縁には肝細胞癌の多発小結節病変を認め肝癌肉腫と診断された.肉腫成分は広範な胆管内進展を...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 49; no. 7; pp. 649 - 656
Main Authors 奥野, 貴之, 小林, 信, 本田, 五郎, 倉田, 昌直, 比島, 恒和, 坂元, 克考
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2016
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2015.0117

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Summary:症例は82歳の男性で,近医で肝機能障害を指摘され当院紹介となった.肝炎ウィルスは陰性でアルコール多飲歴はなかった.腹部造影CTで肝門板の左頭側に造影効果の低い35 mmの腫瘤影と左肝内胆管の拡張を認め,左肝動脈,門脈左枝への浸潤を認めた.胆道造影CTで右肝管本幹から上部肝管にかけて狭窄を認め,左葉の肝内胆管は全く造影されなかった.左肝管からの胆管内進展を伴う肝門部胆管癌の術前診断で拡大肝左葉切除,肝外胆管切除,リンパ節郭清を施行した.病理組織学的所見では腫瘍の大半は横紋筋芽細胞からなり一部横紋筋へと分化し,辺縁には肝細胞癌の多発小結節病変を認め肝癌肉腫と診断された.肉腫成分は広範な胆管内進展を伴っていた.術後6年無再発経過観察中である.肝癌肉腫はこれまで38例の報告があり,予後不良の疾患であるが術後無再発生存例も散見される.肝癌肉腫に胆管内進展を伴う報告は本例を含めて2例のみであった.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2015.0117